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ロシアから降りそそぐ


 投げ捨てられたままのコントローラー。主なき星をみるひとは永遠とオープニング画面とゲーム開始最初の画面を繰り返している。

「まさか」

「あなたの口にしたゲームタイトルが」

「子どもを消した?」

「実感してきた?」

「……いやそんなはずはない! 僕は子どもも消しちゃいない!」

 辺りをキョロキョロと見回す伊藤は、土砂が盛られた小さな山を登っては降りる子どもを目ざとく見つけると、

「あれだよ、さっきの子どもは、星をみるひとに呆れたか、飽きたかのどちらかで途中放棄で、子どもは子どもらしく山登り遊びに興味が移っただけなんだ!」

「へえ~ なにか都合がいいわね」

「それじゃあ、証拠があるのか! 君はあの子どもがゲームに興じてた子どもとまったくの別人であるとの証拠が! ドラドラドラ……どうなのよ!」 

「まあ人間の瞬間的な判別能力なんてアテにならないとよく聞くわよね。例えば、子どもの服装よ。山遊びに興じるあの子どもは、スーパーチャイニーズも逃げ出すような、奇抜な人民服を着てるわ。あれだけ目立ち、それでいてインパクトのある格好をしていうけど、ゲームをしていた子どもがはたしてスーパーチャイニーズ2に出ていてもおかしくないほの、きっぱりこれ人民服と言い切れる服装だったかわ、もう定かじゃないこと」

「いや、ゲームをしていた子どもは、スーパーチャイニーズ3のようなはっきりとした人民服は着用していなかったのは確か。後ろ姿でしか拝見できなかったけど、それは確か! ザ・マネーゲームの続編のIIの兜町の奇跡なんてしょせん株価で大儲けしたくらいだろう。それで奇蹟なんて大げさだ、このバブル紳士が! ってな具合のどうしようもない奇蹟よりも確かな論理で僕は語っている!」

「奇蹟よりも高い確率ってしょせんそのていどの自信ってわけでしょ。ほら、やっぱり伊藤の記録力もその程度なのよ。アンパンマンのひらがなだいすきからやり直しを勧めたいほどの記憶力。かといって間違ってアンパンマンのおえかきしよう! に手を出しちゃまずいわ。感性を磨くことは必要かもしれないけど、行き過ぎた独創性は、がんばれゴエモン外伝 きえた黄金キセルのキセルさえ探せないほどの判断力の低下を呼ぶと思うから。だってそうでしょ? 捜し物って、あるべきところにあるものなのよ。それが独創力にちょっと傾倒したのが捜索隊の一員になると、あらぬところを家探しで、時間はただいたずらに過ぎていく。シェラザードやら飛龍の拳やらカルチャーブレイン特有の仰々しい広告の隅から隅まで楽しんで、それでいて、カルチャーブレインの信頼度のなさから、飛龍の拳のⅡにも、Ⅲにも、あげくスペシャルにも手を出さないなんて楽しい見極めのひとときを過ごす時間がなくなるわけ」

「うむむ、君のいうことはなにか一見、道理もなにもないようで妙な説得力がある。確かに僕はあの山遊びする子どもがゲーム遊ぶの子どもと同一なのか、それともまったくの別人だか、判断できない」

「そうでしょ? わかってくれた」

「まあなんとなくだけどね。それじゃあ僕は責任逃れできるわけ?」

「ええ、あの子どもが本当に絶命したか否か定かじゃないのだから、あたなにはインドラの光が挿し込むこともなく、ただ無駄に時間を消費する日々が待っているのよ」

「そうか、よし、なにか心が晴れてきた。ゲームをしようか」

「ゲーム? 子どものやり残した星をみるひとをやるの?」

「冗談じゃない。滅びるまでの貴重な刹那、星をみるひとに使ってたまるか」

「それじゃあどうするのよ」

「あそこにアタッシュケースのような箱があるでしょ?」

「ええ。ファミコンの横に置いてあるわ」

「僕は、あの箱の正体をファミコンのカセットを収容している箱と読む」

「まあ」

「眠れる箱にはお宝がざくざくだよ」

 伊藤はさっそく箱の開閉に取り掛かる。いかにも厳重そうな作りであるが、ロックされた鍵付きの留め金を横にしただけ、あっさりと秘密の箱は、その全貌をさらされる。

「見込んだ通りだ。このケースは、ファミコンのカセット入れ。見てみ、工藤。縦3×横7の合計21個のソフトが収容できる仕様になっている」

「あら。でも気になることがあるわ。21個の収容ケースのうち19個は埋まっているけれど、二つは空きだわ」

「ひとつは星をみるひとが収容されてたはず」

「でももうひとつがミステリー。赤川次郎 幽霊列車も裸足で逃げ出すほどの謎」

「19個のソフトと星をみるひとをあわせ見れば、残りのひとつが推測できるなら推理のしがいがあるけれど」

「その線で推理できないのがもどかしい。なぜなら、19個のソフトは だからだ。星をみるひとは分類上RPGに当たる」

「テトリス。落っことしパズル とんじゃん!?。ヨッシーのクッキー。テトリスフラッシュ。パラメダス。ハットリス。ドクターマリオ。サンリオカーニバル。サンリオカーニバル2。パラメダスⅡ。ぷよぷよ。DE-BLOCK。テトリス2+ボンブリス。ワリオの森。クレヨンしんちゃん オラとポイポイ。ヨッシーのたまご。パズロット。フリップル。KLAX。の19本だ」

「みんないわゆるテトリスから派生した落ちモノパズルってやつじゃないの」

「あ、そうか! なるほど、って、一応RPGであるはずの星をみるひととは関係ないじゃないか」

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