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第二章19 狂喜怒ー2

 ワタシの名前はアメリアン・ラヴェニエ。人間族の王女にして、世界で一番美しい女だ。


 この赤い瞳が、この金色の髪色が、この美しくてハリのある白い肌の全てが美しい。


 その美しさの"おかげで"


 誰もがワタシの言葉にひれ伏す。


 ワタシが"美しいから'


 ご飯を食べたいと言えばご飯が用意される。


 ワタシの"声がキレイだから"


 ワタシが死ね。といえば、騎士が不届き者を殺してくれる。


 "ワタシのために"


 可愛い人間の子供の"生き血"が欲しいと言えば目の前に晩餐のように用意される。


「いいわね、可愛い子揃いじゃない!豊作だわ! ランララン〜」


 ワタシは上機嫌に服を脱いだ。お風呂の上に、彼らをぶら下げ、




 ワタシは今日も鞭を手に取り、生き血を搾り取る。




 泣き叫ぶ声が堪らなく気持ちがいい…


 ーーこの声がワタシを若返らせてくれる


 ハリのある美しい叫び声が好きだ。


 反抗的で、一途(いちず)なオトコの子の声も素敵だ。


 ーー素敵だわ…!


 ムチで刺激するたびに可愛い声を出す。


 可愛い反応を示してくれる。


 ーーワタシは人間が大好き


 もっと声をきかせて…血を浴びさせて…


 あなたたちが流すその血がワタシを美しくしてくれる。



「ラヴェニエ! お前いい加減にしろ!」


 そういいながら、浴室に騎士を連れて入ってきたのは…


「お兄様…」


 名前は知らない。覚える"価値"がない男。でも、不思議とワタシが"死ね"と言っても殺されない。不死身の男。


 こいつが死ねば、もう少し楽しく動けるのだけど…


「お前、そんな子供を……今まで何人殺してきたんだ! この外道が!! 」


 ワタシと違って、金髪の汚い赤い目をした彼は怒るように言った。


 汚らしい顔に汚らしい服装、貧相な騎士に貧相な靴…ほんとうに人間なのか?この下品な生き物は


 こいつの血はどれだけ汚いのか…ワタシには想像できない。


 それに…


「ワタシの美しい裸体を見てもいいのはこの子たちだけよ…早く散りなさい。お兄様」


 私は彼女の傷口からでる赤い水を舐めながらいった。

 痛みに体を震わせる彼女に、ワタシは脳がとろけそうだ。


「お前をいつか、弾頭台に送ってやる!!」


 彼は拳を震わせながら、浴室から大きな音を立ててでていった。


 下品な男だ。"弾頭台"が何かは知らないけど、不快な気持ちになったワタシは、ストレスを可愛い子たちにぶつかることにした。


 ごめんね…ワタシのために働いてくれてるのに…イタくしちゃって……


 ワタシは悲しげな表情で、全ての骨が出るまで血を搾り取った。


 ーーああ…これで最後の1人だったのね…。また、集めないと…


 ワタシは集めた血のお風呂で疲れた体を癒すことにした。


 ーー美味しい、飲めるし、健康にいい、最高だわ!


 でも、


 すぐに消えてしまうからとても辛い…1日経つと、この赤い液体は臭くなってしまう。


 鮮度が大切なのだ。


「もっと長く、搾り取ることができる人間がいればいいのだけど……」


 ワタシの願いは儚く、血の海の底に沈んだ。




 ***




 いつの日だろうか…毎日のように報告が来るようになった。


「お嬢様、貧民街の方々が…"子供を返せ"と騒いでおります」


 ワタシの専属執事が怯えたように言った。なにを言っているのだろうか?解決して欲しいのだろうか?


「わかった。殺せ」


 ワタシは次の可愛い子たちが来るまで、髪の毛を整えたり…爪をキレイにしたりと忙しいのだ。


 だから


 ーー面倒ごとはお前らで片付けろ


 と圧力をかけた。



 それから数ヶ月、毎日血を浴びた。



 浴びるたびに、肌に潤いが増していた。(つや)が増していた。



 ーー昨日は最高だったわ!今日も、豊作だといいのだけど…



 ただ、今日は少しだけ違った。


 いつものように、可愛い子たちの手縄をひいて、浴室に行くと父上と母上がいたのだ。


 ワタシと同じように黄色い髪に赤い目…でも、つまらなそうな人生を送っている、可哀想な人たち。


 名前は知らない、覚える"意味"がないから


「ラヴェニエ…もうやめて…」


 母上が悲しそうに言った。


 なぜ?


「ラヴェニエ…、久しぶりに私と外に出てみないか?」


 父上が苦笑いをしながら言った。


 なぜ?


「助け…て…!お…おさま…!」


 1人の子が、彼に抱きつこうとした。


 だから、ムチを打って止めた。これは、(しつけ)だ。おかしなやつに絡むと、血が汚くなってしまう。


「はやくでていって? ワタシにはやりたいことがあるの」


 ワタシは服を脱ぎながら言った。そんな美しいワタシをみた彼らは泣きながら外へ出ていった。


「あいつを…もう…」

「いや、まだ…」


 何かをいっていたが、どうでもいい。


 さあ


「さっきのはどういうことかしら?」


 可愛い子の服を剥がし、みんなの前に晒した。


 これは、お仕置きだ。


 服を着せたままやりたかったが…これは愛のムチだ。仕方ない。あいつらがここに来なければこんなことにはならなかったのに…



 あれから数日経った頃だろうか…


 …今日の子も最高だったわ!


 今日はみんな従順だった。私の言うことをなんでも聞いてくれた。


 ワタシは上機嫌に、寝室にいくと"手紙"が置いてあった。


 そこには


「目を覚ましてくれ、ラヴェニエ…あの時はすまなかったと思っている。だから、もうやめてくれ。もしも、受け入れてくれるなら私と共に貧民街に謝りにいかないか?責任は全て私が負う。ーークロードより」


 と書いてあった。


 なにを言っているのだろうか?貧民街に謝りに行く…?


 何のために?


 このワタシが、なにも悪いことをしてないのに謝りに行くのか?なんだそれは…、理不尽だ


 ふざけるな!


 はぁ…頭が悪いやつが近くにいるとほんとうに迷惑だ。


 ワタシは手紙を見なかったことにして、明日は今まで以上に残虐に血を搾り取ることにした。


 "あいつら"があんなことをしなければ可愛いこの子たちは苦しまなかったのに…


 可哀想に。


 その次の日のことだった。


「お嬢様!お逃げください!!」


 ーー反乱が起こった。


 父上と母上は"死んだらしい"


 ーー最高じゃないか!


 これからは邪魔をされずに可愛い子たちと過ごせると思うと、ワタシはワクワクを抑えきれなかった。


 これからは楽しい生活が待っている…


 そう思っていた。


 ーーえ、え、ええ?


 ワタシは浴室のすみに地下室があることを"初めて知った"


「ど、どこを通るつもりなの?」


 ワタシは驚きながら言った。暗い空間、汚い天井、砂利だらけでベタベタした汚い床、腐った油の匂い…


「か、隠し通路でございます。」


 執事はそういうと、ワタシの手をひっぱりながら走った。ワタシはただただ不快だった。


 砂利を踏むたびに、パキパキと崩れるような音、感覚…臭いネズミの死骸のような匂い。


 ーー気持ち悪い…


 ワタシは砂利に足を取られ、転んでしまった。足元をみると、ヒールが折れていた。


「痛ッ!」


 そして、手足には白い砂利が"突き刺さっていた"


 地面に触れたところの全てを"怪我していた"


 血だらけの服、血だらけの手足、明らかに重症だ。


「痛い痛い痛い痛い…いたいよおお…」


 ワタシは涙ぐんでいた。


 その時のワタシは久しぶりに感じる"痛み"が怖かった。


「大丈夫です…お嬢様。軽傷です。ささ、あそこに出口があります。どうぞ…お先に」


 執事は悲しそうに言った。まるで、あの子たちのようにここが死に場所だ。と言いたそうな顔をしている。


「お前はどうするつもりなのだ?」


 外に出るとワタシは涙ぐみ、尋ねた。


 1人でどうやれと言うのだ。


 どうやって生きていけというのだ。


 お前がいないと…ワタシは何もできないんだぞ?


 ………返事がない。


 振り向くと、出口の扉が固く閉ざされていた。


 ーーどうして…ワタシを1人にするのだ。


 どうしてワタシがこんな目に遭わないといけないのだ。


 そうして、周囲を彷徨っていると


 目の前に貧乏そうな服を着た人たちがいた。


 その中には昨日絞った、可愛い子に顔つきが似ている人もいた。


 そこには人間がいた。エルフもいた。獣人もいた。ドワーフもいた。


「見つけたぞ!!」

「大丈夫か!?今そっちにいく!」

「私の子はどうしたの!!」


 彼らはワタシを見ると同時に弓を、斧を、クワを、剣を構えた。


 ーーああ、助けに来てくれたんだ。


 ーーよかった。またワタシの"美貌"に人々が…


 そんなことを思いながら腕を伸ばしながら近づいていると


 ふと、腕に力が入らなくなった。


 地面に転がっていた。


 ワタシのキレイな赤くて白い手が地面に落ちていた。


「い…いやぁぁああ!!」


 ワタシは自分の腕を押さえていた。


 痛い…痛い…痛い、イタイ!!


 そんなことを思い、下を向くと


 足に矢が刺さっていた。


 ワタシは耐えきれずに倒れ込むと、突き刺さっていた"砂利"が体に食い込むのを感じた。


「いたいいいい!」


 背中から何かが入ってくる感覚がある。


「うあぁぁぁぁあ!!」


 足に何かが入ってくるような感触がある。


「きゃああああっっ!」


 叫べば叫ぶほど、"痛みがなくなる気がする"


「あああ…」


 胸が熱い…声がだしづらくなった。


 誰か…助けて…

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