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第一章17 性格審判

 

 この世界では珍しい黒髪黒目の魔族は今、何が起こっているのか、理解できないでいた。


「なんだ…?これは、私は何を見ているのだッ!」


 そこには痛がる素振りも見せずに骨をバキバキと折り…皮膚、内臓を裂いて辺りに血を撒き散らしながら"化け物"に近づく少女がいた。


 …本当に勇者召喚は腹立たしい。


 あの"化け物"が炎の勇者を殺したという報告を受けた


 あの時から


 私はあの少女を本気で殺すつもりだった。


 容赦もせず、油断を誘い…必ず抹殺する。


 だからこそ


 私は油断はしていなかった。結果的には功を奏したのかもしれない。


 もしも


 人間を侮ったままあの少女の前に姿を表せば私が殺されていたのかもしれない。


 今の私は罠を使って良かったと心から思っている。


 戦力の分析は終わった。魔王様へ急ぎ、報告せねばならない。


 ーーあの少女を早めに殺さないと、今後この世界で彼女を止めれる存在はいなくなるだろう。


 ーー人やモンスターは肉体的にも精神的にも"成長"していくのだから。


 それも、ユニーク個体の中には成長速度が普通の数倍にも膨れ上がる個体もいる。


 ーーユニーク個体であれば、スライムですら"魔王化"する可能性があるんだ


 ーーもしも、あれが人間の皮を被った凶悪なユニークモンスターであれば………


「これは最重要任務だ。あの化け物を殺せ。」



 ***



 ーー私は私自身が誰なのか分からなくなるぐらいに…成長している気がする。


 ーー特に精神的な成長速度での成長が早い。


 ーーエルフの死体をみてもなんとも思わない…


 ーー苦しんでいる彼女を見ても…心の底から助けたいと思っていない気がする。



 私はまるで、この世界の全てを"知っている"ような感覚に襲われていた。


 例えるなら


 調べれば何でも教えてくれるWebサイトって感じだ。


 どこに何があって…この単語の意味は〜こうで、あ〜で…


 でも、現実は違う


 実際にはこの世界について何も知らない。


 ただ、精神的な成長というのはそういう感覚なのだ。



 ーーこれは私だけの特権だよ



「ふぅ……まずは」


 私にはやるべきことがある。


「目の前で苦しむ少女のために」


 ーーいいや、わたしの目的のために


「この"化け物"を殺さないと」


 私は自身の体を再生しながら《水流操作(エクリュード)》と《水成形(リクイドクラフト)》を発動させ…


 名の知らぬ、彼の首を切断した。



 ***



『ああ あの魔物は彼女にとっての"敵"なんだね』


『それとも 創造主なりの償いなのか?』


 私は"どう? 凄いでしょ?" と言わんばかりの顔でピースをしながら言った。


 彼女が"スライム"を創ったのだとしたら…彼を殺すのは意外だった。


 でも


 ーーわたしにとってはそれが良い


 ーーアリシラも殺すんだろう?


 ーーまるで 裁判長のように 独断と偏見による "殺人" を続けてきた君にとって…


 彼女は有害だから


 私は髪を捲しあげながら、そう語ることにした。それが世界の意思であるかのように。明快的に。


 まあ


 ーースライムを創ったのが彼女なら やりかねない


 ーーでも 最終的には平等な世界になる


 私は指を空中でくるくると回しながら"そう願った"




 ***




 ……どういうこと?


 イカれ狂人を切ったはずなんだよ? でも、水になったんだ…嘘じゃないよ!? 水風船を破った後みたいに。


「うーん?どゆこと」


 全く分からない…エルフじゃなかったの?


 《スキル:再生の波(リジェネイトウェーブ)を使用しますか?》


「あ…久しぶり、システムさん、"はい!"」


 周囲に散った液体が消え、傷跡が凄い勢いで治っていく…なんか少し強くなってる?


 それに、最近スキル名を勝手に叫んでいたからシステムさんが提案してくれるのは新鮮だよね。


 システムさんが何か喋るまで私、待機してた方がいい…?ニートみたいになるけど…


「考え事してる場合じゃないよ!私!」


 私は首を振りながら言った。。。首じゃなくて水だけど………。まだ、彼女を助けられたわけではないのだ…!


「あー!あー!大丈夫?」


 私は翠髪(すいはつ)の少女に語りかけた。


「あ、あれ?や、やっぱり私のスキル《ヒール》の劣等版?…名前カッコいいのに性能弱いタイプ?ヒドイ…システムさん、この名前改名してくれない?」


 《……????》


 私は涙を浮かべながらシステムさんに懇願した…が、意味が分からない。と言わんばかりの思念が伝わってきた。


「あ…あの……」


 翠髪の少女が目を覚ました。


 その瞬間


「あれ?俺何してたんだっけ…」

「あの魔物はどこだ!?」

「おかあさん…どこ〜?」


 周囲にいたエルフ達が…


 死体の山かと思っていたエルフ達が…


 "起き上がっていた"


 ????????


「わ…私の魔法って範囲魔法なのね…」


 っていうかもう助からないレベルで怪我してたよね?


「あなたに関しては首飛んでたよね」


 見た目がおっちゃんのエルフの肩を叩きながら笑いかけると、なんだか顔が真っ青だった。


「どうしたの!? 血が足りてないの? 休んでおいた方が…」


「「せ、精霊様!?!?」」


「『いや』」


「だ、大精霊様なのでしょうか?」


 ????


 なんか途中でノープルさんの声が聞こえたような…


 …………何遊んでるんですか?


「私たちを助けて頂き、本当にありがとうございます…」


 ちょっとエロい服を着たエルフたちが彫像みたいに頭を下げていた。お兄さんもカッコいいね、俳優かな?


 あの木陰においた少年、蘇生できなかったのに…なんでこの人たち回復できたんだろ?


 目の前の状況から目を背けるようにそんなことを考えていると彼らは語り始めた。


「大精霊様! 私たちを救ってくれたこと、感謝いたします! そ、その…助けてもらったお礼をいたしますので…どうかお待ちください!!」


 そういうと彼らはそそくさと準備を始めていた。


 私の為の椅子…果物が目の前に積み上がっていく…


「漫画のあるある展開キター!は…!…こ、コホン。なにかご用かな?」


 目の前にこちらを見つめる少女の視線を感じた私は私は慌てて低い声を出した。


 ここで15歳のただの女の子だと知られたら…態度が豹変してしまうかもしれない……


「ホーお前、ガキンチョなん?オラオラ」

「精霊って言っても大したことないんですねー」


 なんて…美男美女達に言わせるのはダメだ。サイテーだ。


 そんなことを考えていると目の前に来た少女は喋り始めていた。


「その…エル…いや、エルディを見ませんでしたか?」


 ??


「すみません、名前を言われても分からないよ…わたし、この国初めて来たから…」


 そういうと彼女は悲しそうに俯いた。


 ああ、この翠髪(すいはつ)


 ーーさっき狂人に刺されていた人か…


「それよりも、傷口傷まないの? さっき…結構…その…痛そうだったけど」


 私はあの光景を思い出してしまい、口籠もりながら答えると彼女はわたしに笑顔を向けてきた。


「はい…ありがとうございます。大精霊様」


 その…大精霊様ってのやめて欲しいんだけど…


 あれ…?


 っていうか、なんでだろ…


 あの狂人はわたしが精霊ってことに気づいてなさそうだったけど。


「そういえば、みんなはどうして、わたしが大精霊様だって確信してるの?」


 私は疑問を言葉にした。なんだか、聞かない方がいい気がしたのは気のせいだろうか


 彼女は満面の笑みで答えた。


「エルフなら誰でも分かりますよ。他の種族にはない"魔力の波長"を感じることができますので…」


「うん、」


 私が相槌(あいづち)をしていると続けて彼女は語った。


「あの時のニンゲンがこの結界に入ってこれたのも…魔物が入ってこれたのも…やっぱり…魔力を馴染ませる方法が……」


 彼女は何か複雑な話をしているようだったので1人にしてあげることにした。


 ーー今日はいい天気だ…水に入りたい…!いつか海にいきたいな!


 世界を救う任務は楽しくいかないとね!

最後まで読んで頂きありがとうございます!コメント、評価のほどお待ちしております!


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@PoziRaion

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