2 魔力の量産体制、彼らには頑張ってもらおう、やらかしてきた分まで
中学校を魔力結晶の生産工場に。
ついでに被害者の救済も実行。
帰還直後の成果としては上々だろう。
だが、これで終わるわけもない。
「そんで、どうする」
魔力結晶の生産工場となった教室を出て。
助けた者達に尋ねていく。
「ここから帰ってもいいけど。
良かったら俺に協力しねえか?」
どうみてもそれは勧誘だった。
帰還者としては協力者がいなくてもかまわない。
これからの事は一人でやっても良い。
ただ、協力者がいれば作業が楽になる。
なので、この場でやる気のある者を募っていく。
「強制とかはしない。
やる気がないならそれでもいい。
文句は言わない」
躊躇ってる者達に説明をしていく。
「ただ、邪魔はするな。
他の連中に俺の事をもらしたりしたら殺す。
敵だからな」
それだけはしっかりと伝えた。
帰還者としては、とりあえず敵でなければよい。
積極的に手伝わなくても良い。
ただ、邪魔をしなければそれで良かった。
つまり、何もしない、無視をする。
それだけで十分だった。
協力するといっても、知識や技術がなければ特に戦力にならない。
下手に行動して事が露見する可能性の方が高い。
それくらいなら、何もしないでいてくれる方が良い。
ただ、それでも味方になる気があるかどうか。
敵になるつもりが無いのかどうか。
それだけは確かめておきたかった。
今後どうなるかは分からないが。
今の時点でどう思ってるのか。
それだけが分かれば良い。
ありがたい事に誰も文句は言わなかった。
進んで協力するという。
「あいつらみたいなのをやっつけるんだろ」
「だったらやるよ」
「出来る事はなんでもする」
そう言ってくれる。
やられて嫌な思いをしてきた者達だ。
仕返しが出来るとなれば喜んで協力してくれる。
それに帰還者への恩もある。
虐待をしてきた学校犯罪者達。
イジメという軽い言葉で片付けられる暴行・傷害・恐喝・窃盗などなどの悪事。
これらを行っていた悪人悪党を潰してくれた。
そうしてくれた帰還者に少しでも報いたい。
そんな思いがある。
恩には恩を返す。
そんな当たり前の気持ちをしっかり持ってる者達。
被害者達はそんな人間ばかりだ。
善意を簡単に踏みにじる悪人悪党とは違う。
「助かるよ」
帰還者は協力者達を手に入れた。
「これでやれる事が増える」
帰還者はそんな協力者達を強化していく。
最低限の能力を身につけてもらわねばならない。
気持ちがどれだけあっても、能力が無ければ意味がない。
だから能力を引き上げる。
生産してる魔力結晶を使っていく。
数百人の男女を使ってるのだ。
排卵を早め、受精率も魔術で高めてる。
一時間もすれば魔力結晶は数百個も出来上がっていた。
それらを協力者達に配っていく。
「これを使えば能力を上げる事が出来る」
そう言って手渡し、使い方を教えていく。
手で握って念じるだけ。
自分の中に吸収していくのを想像する。
それだけで魔力結晶はエネルギーとなって念じた者に取り込まれていく。
人間一人分のエネルギーが手に入るのだ。
それだけで一気に能力が上がっていく。
細胞が活性化され、今まで以上の能力を発揮していく。
分かりやすい所では身体能力。
それに、脳の機能なども強化されるので智慧なども。
精神面も含めて様々な能力が上昇していく。
それだけではない。
今まで見えなかったものも見えてくる。
俗に言う霊能力。
そのようなものも身につけていく。
幽霊とかオーラとかが見える人になっていく。
人間としての能力が強化されたのだ、当然のことである。
加えて、超能力や霊能力なども使えるようになる。
透視や千里眼。
念話に読心。
浮遊に念動力。
それぞれ使える能力に違いはある。
だが、様々な超常現象を起こせるようになっていく。
様々な知識や技術を手に入れる者もいた。
機械や電子、物理に心理に歴史など。
学問分野や科学分野の知識・技術を身につけていく。
それこそ脈絡などまったく無く。
だが、魔力結晶を使うとこういう事が起こる。
今までこれっぽっちもやってなかった事が身につく。
それが剣術だったり、戦術だったり、指揮統制だったり。
異世界で体験した帰還者にとっても不思議な事だった。
便利だから気にしないでいたが。
大切なのは、どうしてそうなったかという過程ではない。
手に入れることが出来たという結果や成果だ。
そうなる理由や過程も分かれば今後に活かせるだろうが。
それだけに気を取られてるわけにはいかない。
それに今必要なのは、戦力になってくれる人材だ。
人材の作り方・教育方法はどうでもいい。
解明や究明は今後暇なときにやれば良い。
そんな研究をしてる場合ではないのだ。
こうして手に入れた人材と共に次の行動に繰り出していく。
まずは周辺地域の制圧。
まだ学校内で事が終わってるから良いが、今後時間と共に問題は拡大していく。
生徒が戻らなければ、どの家もおかしいと思うだろう。
なので、先手を打つ。
各家庭を制圧していく。
生徒の家は名簿にのってるのですぐに分かる。
これを手分けして制圧する。
とりあえずは洗脳。
家にいる者の意識を乗っ取る。
そうして騒ぎ立てないようにしていく。
これらを協力者に手分けしてやってもらう。
もちろん魔力が足りないので、生産した魔力結晶をもっていってもらう。
必要な魔術を発動させるための魔力はこれで補う。
急がねばならない。
時間はすでに6時間目に突入している。
あともう少しすれば帰宅がはじまる。
部活をやってる奴はともかく、帰宅部なら即座に家に戻るだろう。
そうなるまでに処置を終えねばならない。
また、学校周辺に住んでる者達への処置も必要だ。
これから校庭に誰も出なくなる。
それをおかしいと思う者も出てくるだろう。
なので、先にこれらも洗脳しておく。
とはいえ、個別にあれこれするというわけでもない。
周辺一帯を覆う結界を作り、意識を操作していく。
範囲内に入れば、仕掛けた通りの行動をとるようにさせる。
維持のために膨大な魔力が必要になるが、それは問題がない。
何せ、大量に魔力結晶を作ってるのだ。
今夜一晩くらいの魔力はどうにでもなる。
それに、魔力製造はこれで終わりではない。
これから制圧した地域にいる者達も使うのだ。
生産用の器具の調達に困る事はない。
また、現在魔力結晶を生産中の連中には、次の製造装置を作り出してもらう。
あえて魔力ではなく子供を生ませて。
それを魔力結晶を使って急成長させる。
そして妊娠・出産が可能な状態にして、魔力結晶生産をさせていく。
これを学校周辺で行い、この地域を魔力結晶生産工場地帯にする。
その為の初期処理を行っていく。
行動は早かった。
帰還者がまず広範囲の結界を作りだし。
それから協力者達が周辺を巡って個別の処理をしていく。
もちろん、その途中であちこちにいる被害者も拾っていく。
今まで虐げられていた者を放置は出来ない。
それに、悲惨な目にあってきた者達に更にむごい事は出来ない。
この選別だけはしっかりしていく。
被害者はそれこそあちこちにいる。
学区の重なる小学校は言うにおよばず。
その近隣地域の町会などでも。
老害などが偉そうにふんぞり帰ってる地域団体はそれなりにある。
あるいは家庭内暴力。
肉知的・精神的DVの被害にあう夫や子供達。
この被害にあってる者達も覆い。
更に柄の悪い地域というのもある。
暴力団への人員供給地ともいうような場所だ。
問題をおこす人間があつまっている。
なお、学校で問題をおこす者達が住んでるのはこういう所だったりする。
周辺地域にいる労働者達にも悲惨な者もいる。
いわゆる会社員達だが、この中にブラック企業に勤めてる者がいる。
これらも同情に値する。
「苦労してるんだな……」
ブラック企業の事は分からない。
だが、異世界における王侯貴族に宗教、各有力者に裏社会の首領などなど。
そういった連中と同じようなものだというのは分かった。
思い出すのも腹立たしいものだった。
異世界から召喚した帰還者を言いように操ろうとしていた連中だ。
途中、それに気付いた帰還者は、これらへの報復を開始。
それを成し遂げて日本に戻ってきた。
その事を思い出し、会社で虐げられてる者達に同情した。
言いように操られてる、使われる辛さは帰還者も味わってきた。
そんなものたちには共感をおぼえる。
ただし、それでも全員を助けるつもりはない。
そんな被害者も学生時代や幼少期は加害者だった場合もある。
そんな人間には同情はしなかった。
自業自得であり、なるべくして今の状態になったとしか思わない。
そういった者達は容赦なく魔力結晶製造機器になってもらう。
そうして学校周辺を制圧していく。
数千人の人間が住む地域が全て魔力結晶製造工場になった。
また、まともな一部の人間を選別し、それらの苦労をねぎらった。
「やりかえすなら手伝うけど。
どうする?」
尋ねるとたいていの者達が「やらせてくれ」と言う。
もちろん帰還者は手伝いをしていく。
おかげで魔力結晶生産器具に出来ないものも出て来た。
死んでしまったら器具には出来ない。
こればかりは仕方ないと思って諦めた。
再利用できないのは残念だが、各自の恨みをはらす方が先だ。
それに、そもそも利用できない者もいる。
老齢だったりするとどうしようもない。
むしろ、怒りの矛先をぶつけてサンドバックにした方がよっぽどよい。
少なくとも、誰かの気持ちをおさめる事が出来る。
嫌な気分を解消出来る。
また、死にそうになったならばそれはそれで良い。
霊魂をそのまま魔力結晶にするだけだ。
増産は出来ないが、最低でも一つは魔力の塊を手に入れられる。
それで十分だった。
男の方はまだ生殖能力が残ってるので生産工場に放り込める場合もある。
だが、体もろくに動かない物をわざわざ使う利点もない。
なので、サンドバックにしてから魔力結晶に加工した方が効率的だった。
こうして学校周辺も制圧していく。
各家庭での魔力結晶生産を増進していく。
あちこちの家で行われてる、排卵・受精・着床・魔力結晶化の作業、
それを見て帰還者は思った。
「家内制手工業ってこういうもんなんだろうな」
こうして学校周辺が制圧されていく。
夜になるまでに人口数千人が魔力結晶生産の器具になっていった。
難を逃れたまともな人間は、総勢200人ほど。
これは中学校にいた者達を含めた人数だ。
全体の一割に満たない程度である。
「まあ、こんなもんだよな」
まともな人間は少ない。
異世界でも思い知った事だが。
戻ってきた世界でもあらためてこの事実を知る。
「最悪だ」
まともな者が少なく。
大半が酷い人間しかいない。
そうなのだろうと思っていたが。
実際に目にすると嘆きたくなる。
それでも帰還者は活動を続けていく。
確かに救うべき者は少ない。
だが、はびこる悪人悪党を野放しには出来ない。
これ以上被害が広がる前に問題を片付けねばならない。
そう思いながら活動を続けていく。
ただ、どうしてもすぐには出来ない事もある。
例えば会社。
あちこちから人が集まってくるので、対処しなければならない範囲が広くなる。
とりあえず、問題をおこしてる者に軽い処置を施していくが。
根本的な問題解決には時間がかかる。
また、既に復讐対象が死んでる場合。
これはさすがにどうにもならない。
代わりといってはなんだが、その子孫や親類縁者を標的にするしかない。
問題をおこす者達の血を引く者達だ。
問題をおこした者を生み出した一族だ。
どうせどこかで問題をおこす因子を抱えてる。
そんなもの生かしておくわけにはいかない。
それに、問題をおこした者が手にした利益などを使って生きてるのだ。
何世代にもわたって、誰かを虐げた成果の上に居座ってる。
そんな状態、今後も続けさせるわけにはいかない。
ここで一族の、代々の罪を清算してもらう。
せめて今後は二度と悪さをしないように。
悪さの痕跡を消すために。
しかし、いずれにしても簡単に手を付けられるものではない。
やるためには、多大な魔力を用いる事になる。
「もっと魔力結晶を増やさないと」
問題を片付けるためにも、魔力結晶が必要になる。
生産手段をより増大させるために、悪さをしてる連中を精算器具にしていく。
「まずは土台作りだ」
何をするにしても元手が必要になる。
金であり、材料・原料であり、器具や設備であり、知識や技術と人であったり。
これが揃わない限り事を上手く運ぶ事は出来ない。
「だから、まずはここに生産工場を作っていく」
帰還した場所である中学校。
帰還者の近隣地帯。
まずはここに魔力結晶の生産工場を作る。
そして人を集め、人を成長させ、事を成し遂げられるようにしていく。
魔力があればたいていの事は出来る。
現代科学で防ぎようがない力だ。
これを使って有利に事を運んでいく。
その為にも大量の魔力結晶が必要になる。
増産に次ぐ増産を続けねばならない。
工場は年中無休でフル稼働。
生産器具は寝る間もなく活動をしていく。
問題は無い。
自ら作り出した魔力結晶で生命は維持できる。
結晶一つで一年間生きていける。
食べる事も寝る事もせずに。
なので、休ませる必要がない。
もともと他人にブラックな事を強いていた連中だ。
それが自分に返ってきただけである。
同情する必要もない。
それでも使い潰れていく。
卵子の数には限りがあるというし。
男も精力を搾り出しているのだ。
寿命は大幅に短縮される。
そんな者達は精根尽き果ててしわくちゃになっていく。
中学生くらいの年頃の者が、老人老婆の如くに。
そうなったらもうどうしようもない。
最後に生産器具だった者達の命そのものを結晶にするしかない。
そこでようやく彼等の人生は終わる。
自業自得の苦しみの人生が。
ただし、輪廻転生は不可能だ。
霊魂そのものが魔力結晶となるのだ。
そして、エネルギーとして消費されていく。
転生するべき霊魂が消えてしまうのだから、再び生まれてくる事はない。
悪さをしてきた霊魂はこうして痕跡も残さずに消滅する。
当然の報いというべきだろう。
少なくとも帰還者は、そうした最後を迎えたクズに何一つ同情はしない。
むしろ、絞りかすになるまで生かしていた事に不満をおぼえる。
「もっと苦しめて殺したかった」
それだけが残念だった。
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