1 異世界から戻ってきた、復讐開始だ
「ああ、そうだったな」
異世界から帰還したらトイレの個室だった。
だいぶ昔の事だったのですっかり忘れていた。
自分がどんな状況で異世界に召喚されたのかを。
異世界転移。
創作物でよく見る展開だ。
何らかの能力・才能をもった者が異世界に召喚される。
そこで活躍して、めだたしめでたしになる話。
それがまさか自分に起こるとは思わず、呼び出された彼は面食らったものだが。
今となってはそれも昔の事。
やる事をやり終えて、こうして異世界から帰還してきた。
そんな異世界帰還者の彼は、自分がどういう状況だったのかを思い出す。
なにせ、召喚されたのが30年前。
その間、異世界で怪物と魔王相手に戦い続けていたのだ。
子供の頃の事など忘れてしまっている。
それでも憶えている事もある。
それが今この場所だった。
「懐かしい」
忌々しくはあるが、記憶とはなにかしらの懐古感情をよび起こす。
次の瞬間には憎しみと怒りにかわったが。
そんな帰還者はトイレの個室から出る。
鏡を見れば、召喚された当時のままの姿。
中学二年生、14歳の頃のままだ。
転移した場所に戻ってきた際に何らかの作用が発生したらしい。
44歳の姿ではない。
だが、構わない。
問題にはならないからだ。
そんな帰還者の前に問題があらわれる。
トイレの個室に逃げてた理由。
6人組のクズ共だ。
表向きはよい子を演じてる、分かりやすいクズ共。
いつも帰還者を虐げて遊んでいた連中だ。
そいつらに向けて距離を詰め、蹴りを放つ。
ぼきっ
膝がおかしな方向に曲がった。
それに気付かず、6人組は床に倒れていく。
人間を超えるほどの能力を持つにまで成長した帰還者である。
目にもとまらぬ速さで動けるし、人間の骨くらいなら簡単にへし折れる。
実際、6人組は帰還者の動きが分からなかった。
鏡の前に立ってると思ったら、次の瞬間に足を折られていた。
この間、一秒にもならない。
瞬時にスネを折られて立っていられなくなる。
不意を突かれたので衝撃に備える事も出来ない。
何が起こったのか分からない間に床に倒れる。
頭を床に叩きつけながら。
「ぐあっ!」
「んっ!」
「あっ!」
悲鳴が上がる。
そのはずだった。
しかし、あたりは無音。
帰還者が瞬時に消音の魔術を使ったからだ。
そして倒れた6人組の足と腕を踏みつけていく。
骨と肉がひしゃげ、足底の形に潰れていった。
「さてと」
まだ何が起こったのか分かってない6人組。
そんな連中を見下ろして、帰還者は復讐をはじめていく。
手始めに、眼下のクズ共から。
消音魔術の効果時間を延長していく。
あと、人を寄せ付けない結界も作っていく。
この結界には強制力はないが、近づいた者はなんとなくこの場所を敬遠するようになる。
気休め程度だがそれで良い。
少しの間だけこの場所から人がいなくなれば。
そして帰還者は転がる6人組を叩きのめしていく。
さんざんやられてきたのだ。
やりかえしても問題はない。
そもそも、理由らしい理由がない。
ある日いきなり虐待が始まったのだ。
嫌味に嫌がらせに始まり、物を盗みだし。
筆箱、上履きが無くなるなんて当たり前になった。
そして、暴行も始まる。
なんでそんな事をしてたのかが分からなかった。
だが、理由などどうでもいい。
やってくれたんだから、徹底的にやりかえす。
それだけだ。
もっとも、理由は今なら分かる。
読心の魔術で判明した。
それは、「楽しいから」
甚振るのがたのしい。
虐待するのが楽しい。
痛め付けるのが楽しい。
そういう人間が確かにいる。
この6人組はそういうクズだ。
ある意味、利害損得で行動している。
自分が気持ちよくなれるかどうか。
自分の思い通りに出来るかどうか。
社会的な利害とか、金銭的な損得なぞ関係がない。
気分や気持ちを優先しての行動だ。
この辺りの気持ちや感情を理解できない人間もいるかもしれない。
だとすれば、それは人の心が理解出来ないからだろう。
気持ちや心などよりも、理性的な判断で人は動くと思い込んでるから分からなくなる。
理性を偏重してるが、これはバカの一種と考えても良いかもしれない。
それはともかく。
目の前の6人は人を痛め付けるのが大好きなクズだ。
生かしておく必要がない。
むしろ、ここで始末しなければならない。
でないと、これからも被害者を拡大再生産していく。
「あっちでもそうだったしなあ……」
思い出してため息を吐きたくなる。
目がここではない遠くを見つめていく。
召喚された異世界でも同じだった。
帰還者を利用しようとする者。
命令に従わせようとする者。
そういった者達ばかりだった。
だから最終的には始末した。
戻ってきたこの世界でも同じだ。
生きていてはいけない連中が多い。
こういう連中を徹底的に殺していかねばならない。
被害者をこれ以上増やさないために。
既に発生してしまった被害はどうしようもない。
取り返しがつかない。
少しでも償わせたいところだが。
だが、それはとりあえず後まわしにする。
大事なのは、これ以上の被害者を出さない事。
その為に、危害を加える者達を処分していく。
加害者を潰していく。
既に行ってる者も。
加害者の素質を持つ者も。
やってるか、まだやってないかは関係がない。
可能性を持つ者を野放しに出来ない。
いつか被害者が出るのだから。
その手始めに目の前の6人である。
30年ごしに仕返しをしていく。
復讐の開始だ。
復讐。
善行の一つである。
なにせ、やられたからやり返すのだから。
なんら悪い所はない。
なにせ、悪さをしなければ何もやり返されないのだから。
悪さをしなければ復讐など発生しようがない。
逆に復讐を否定したらどうなるのか?
加害者が利益を得ていくだけだ。
それならば、悪事悪行を重ねた方が利益になる。
被害者になるよりマシというもの。
倫理道徳的にも正しい復讐。
帰還者は早速実行していった。
無音のトイレが血と肉と骨が飛び散る処刑場になっていく。
隔絶した能力の差をもって、帰還者は人間のクズを甚振っていった。
彼等が今まで他者にやってきたように。
それを6人組に施していく。
特に何もおかしな事はない。
因果応報、自業自得なだけだ。
6人組はトイレの床に転がっていく。
手足はもがれ、内臓も破裂している。
すぐに死なないにしても、このままなら命は消える。
帰還者はそんな6人を治療していく。
6人の体が元の状態に近くなっていく。
破裂した内臓が元にもどり、怪我も消えていく。
ただ、千切られた手足は元にもどらない。
千切られたところで傷がふさがっていくだけ。
6人は手足を無くして復活した。
そんな6人の顎を砕いていく。
下手に喋られるのも面倒だ。
ついでに声帯も破壊する。
破壊した状態で顎と声帯を治療する。
壊れた状態で再生したそれらは、本来の能力を発揮できなくなった。
声も出せず、自分では動けない。
6人をそうしてから帰還者は時計を見る。
昼休みが終わろうとしている。
体育で校庭にいる者など以外は教室に戻ってる頃だ。
それから更に十分ほど待って、校舎内に全ての生徒が入るのを確かめる。
生命探知の魔術によって動向は把握してる。
そこで帰還者は教室の窓と入り口を全て分厚い氷で塞ぐ。
誰も逃がさないために。
更に電撃魔法を放つ。
強烈な電気の奔流で学校を中心とした周辺地域の電気機器が破壊される。
これで外に通報される可能性がなくなった。
されても構わないが、今はとりあえず時間が欲しい。
学校内のクズを始末するために。
あとは校庭に出ている連中だ。
これは転移魔術を使って体育館に全員を送り込む。
もちろん、体育館の出入口や窓も全て氷で覆ってる。
こうして生徒全てを閉じ込めてから行動を開始する。
問題をおこしてるのは6人組だけではない。
それに指示を出してる奴。
放置してる教師。
更に、他の者を甚振ってるクズ。
そんな連中に従ってる寄生虫。
これらをこの機会に処分していく。
教室に戻った帰還者は、早速クズを甚振っていく。
優等生で通ってる外面がよい子ちゃんだ。
この女が様々な輩をそそのかし、操り悪さをしている。
直接手を下さないが、悪さをしてる事にかわりはない。
いわば指揮官という立場でだ。
悪さをしてる事に変わりは無い。
そんな優等生女を叩きのめす。
殴って蹴って。
足首を掴んで振り上げて床に叩きつける。
何度も何度も床に激突する。
綺麗なお顔も、年齢の割に凹凸に恵まれた魅惑のボディも。
全てが粉砕されていく。
別の意味で凹凸のはっきりした顔・体になっていく。
「おい!」
止める者もいる。
野球部のスポーツマン。
体力にものを言わせる暴君。
なのに何故か爽やかな青少年扱いされてる者。
こいつにも帰還者は理由もなく甚振られた。
なので、もちろんやりかえしていく。
なにせ、力が全てという思考だ。
強くもないのに威張るな、という思想信条を読心魔術で読みとる。
それならば、より力のある、より強い帰還者が偉いという事になる。
殴る蹴るの連打で体を粉砕していく。
「文句はないよな?」
全身の骨という骨がほとんど砕かれ。
内臓も破裂してる野球少年に尋ねる。
髪の毛を掴んで持ち上げられたそいつは答えない。
生死の境をさまよってるからだろう。
だが、不当な態度だ。
こいつは無視されると機嫌が悪くなる。
自分の意見が通らないと腹をたてる。
ナルシストなのだろう。
自分の思い通りにならないと、尊重されないと腹をたてる。
それもまた帰還者を甚振っていた理由だろう。
何の理由もなく絡んでくるこいつが帰還者は嫌いだった。
そんな奴が、聞かれた事に答えない。
絡んでやってるのに返事をしない。
許される事ではない。
「おい」
ぼこっ、と拳でビンタをする。
一発ではない。
何回も。
一秒間で数え切れないくらい。
軽くやってるので死にはしない。
ただ、顎が粉になって砕けているだけだ。
「さっさと答えろ」
出来るわけもない。
だが、そんな言い分けを帰還者は聞くつもりはない。
無理難題をふっかけて、出来ないといえば叩きのめす。
それはこの野球少年がやってきた事だ。
同じ事をしても何も問題は無い。
ただ、答えられない事も分かってる。
なので帰還者はこの辺りで一旦終わりにする。
もちろん、手足を踏み潰して千切って。
それから魔術で治療をしていく。
もちろん、壊した顎と声帯は壊れたまま再生させて。
外面がよい子ちゃんも同じだ。
まともな状態で生かしておく理由がない。
これ以外にも主な連中を潰していく。
なにせこの教室には共犯者がいっぱいいる。
主犯の外面よい子ちゃんとその取り巻き。
親衛隊のスポーツ少年達。
その下についてる寄生虫。
それらに何も言えずに悪さを見過ごしてる連中。
この状態をけしかけていた担任教師。
さいわい、この時間は担任の授業だった。
なので、教室内にいる。
そいつも同様にいたぶっていく。
「やれる方が悪いだっけ?」
言われた事を問い返していく。
「あと、ばれないようにやれ、だっけ?」
そんな事を言っていた。
面倒はもみ消すもの、解決するものではない。
そういう態度がよく分かる。
「そんな事実はないだっけ?」
訴えてもこんな調子だった。
まあ、教師なんてこんなもんだろう。
今ではそう思う。
「じゃあ、今ここでは何も起こってない。
そうだな?」
確認をとる。
痛みのせいでうめき声しかあげない教師。
そんな誠実さも欠片もない態度に制裁を加える。
治療をして体を元に戻して、もう一度甚振っていく。
「そうだな?」
再び尋ねる。
この教師の常套手段だ。
自分の都合の良い答えだけを出させる。
しなければ何度も繰り返す。
姉妹には怒声を放つ。
同じ事をしていく。
もちろん教師が認めるわけがない。
それも分かってる。
答えを求めてるわけではない。
だが、
「さっさと答えろ」
何も答えないと常にこう言われた。
だから答えを強要していく。
数回ほど問いかけを繰り返す。
結局なにも答えなかったところで一旦手を止める。
「よし、分かった」
相手の意思や気持ちはしっかりと受け取る。
答えるつもりは無い、自分の都合が優先だという。
答えられないなんていうのは言い分けにすぎない。
少なくとも、この担任教師の場合は。
それならそれである。
別の方向から責めるだけ。
連座制で責任をとらせるだけである。
幸い、この担任には交際相手の女がいる。
大学からの付き合いで、そろそろ結婚しようかという話が出てるという。
そんな教師の交際相手の所に転移する。
一般企業で働いてる所に突然あらわれる。
そいつを捕まえて学校に転移で戻る。
その前に会社にいた者達の意識を操作していく。
担任の交際相手の女の事を忘れるように。
戻ってきたところで手足潰しなどの処理をしていく。
殺してやりたいところだがそうもいかない。
まだやらせなくてはならない事があるのだから。
「じゃ、始めようか」
そう言って帰還者はするべき事をなしていく。
まずは全員の意識を操作していく。
言う事を聞かないのは面倒で仕方ない。
力尽くで一々どうにかするのは手間だ。
労力も時間も無駄にしたくはなかった。
そうしてからそれぞれに魔術印を刻んでいく。
魔術を永続的に発揮させるものだ。
ただし、一つの印につき一つの魔術師かこめられない。
使い方次第では便利ではあるが、応用がきかない。
しかし、今はこれで十分。
今回使うのは、洗脳。
そして、生命の魔力変換。
これらを効率的に行うための補助魔術などなど。
これらを施していく。
あとは男女で組み合わせてスルことをサセていく。
妊娠させるために。
受精卵を魔力に変換していく。
こうすれば魔力の結晶が出来上がる。
こうして出来上がった魔力結晶はかなりの魔力を貯えてる。
生命一つを使うのだから当然だろう。
「こいつのおかげで助かったよなあ」
召喚された世界ではこれを量産して事にあたった。
魔王と呼ばれたものを倒すために。
その後に、帰還者をこき使った人間達を滅ぼすために。
そして、元の世界に帰ってくるために。
戻ってきた今も魔力結晶を大量に作っていく。
この先どうなるのか分からないのだ。
戦力になるものは出来るだけ揃えておきたい。
足りなくて困るよりは、余って使い道に困る方がマシなのだから。
これを学校にいるほぼ全員に施していく。
なにせ数百人の男女がいる。
量産するには都合が良い。
とはいえ、さすがに全員を生産のために使うつもりはない。
例外として何人かは生産作業から外す。
虐待や学校犯罪の被害者達などを。
さすがにこういった者まで使い潰すつもりにはならない。
片付けたいのは加害者とその取り巻き・追従者だ。
それ以外の、特に損害ばかりを受けてた者は助けたかった。
これらは全校生徒と教師の頭の中を覗いて確認してある。
誰がどれだけの危害を加えていたのか。
誰がどれほどの被害を受けていたのか。
既に帰還者は把握している。
これらには直接呼びかけてもいる。
念話の魔術で。
相手の頭・心と直接話が出来る。
「お前らの事は把握してる。
今ならやり返せるけどどうする?」
加害者に仕返しをしたいかどうか。
それを確かめていく。
「やらないと後悔が残るかもしれないからな」
帰還者としてはそれが気がかりだった。
いきなり声をかけられた者達は驚いた。
だが、事情はすぐに理解した。
意識を直接つないでの会話は、言葉以上に相手に情報が伝わる。
即座に、瞬時に。
被害者達は帰還者の気持ちをしっかり受け取った。
そして自分たちの意思を伝える。
「やらせてくれ」
その後、何人かの加害者が死んだ。
いずれも帰還者によって手足を粉砕され、抵抗できなくされて。
そんな加害者達に被害者達は報復をしていく。
机や椅子を叩きつけながら。
これまでの怨念をこめて。
そんな被害者に、
「何しやがる!」
「ふざけんな!」
加害者は詰っていく。
なんでこんな事をするのかと。
そうやって牽制してるわけではない。
本当になんでこんな目に遭うのか分かってないのだ。
自分が悪い事をしてるとは思ってないから。
だから被害者達も遠慮はない。
やられた分を少しでもやりかえしていく。
殺しても構わないと言われてるのだ。
だったら遠慮無く殺すだけの事だ。
そんな心温まる光景を帰還者は遠視・透視の魔術で眺める。
報われなかった者達が少しでも報われていく。
その光景は清らかでどこまでも美しかった。
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