前編
愛は寛容であり、愛は親切です。また人をねたみません。愛は自慢せず、高慢になりません。礼儀に反することをせず、自分の利益を求めず、怒らず、人のした悪を思わず、不正を喜ばずに真理を喜びます。すべてをがまんし、すべてを信じ、すべてを期待し、すべてを耐え忍びます。愛は決して絶えることがありません。(コリント人への手紙I 13:4〜8)
「好きだ」
この言葉が言えたら今こんなに苦しいこともないのに、ずっと言えない、言いたいその気持ちが増していく。
「瑞樹何してるの?」
陽菜に話かけられて、ハッとした。
「あっなんもないよぉ〜」
急に我に戻っておどおどしてしまった。
「何?なんかエッチな妄想してたぁー?」
笑いながら陽菜が言ってくる。
「なによ!してない〜」
こんなこと考えてたなんてバレたくなくて、焦って応えた。
「明らか動揺ジャーン」
長い付き合いなこともあって感づいてくる。
私たちは高一から 2年連続同じクラスで仲がいい。
「何なに?」
こういうずっと聞いてくるとこ以外は好きだ。
まぁしょうがない、だいたいの高校生なんてのは気になるか
と思っている。
いっそう打ち明けてしまおうと思い、言ってみた。
ずっと隠していてもむずむずしたままだ。
「私さぁ透くん好きなんだよねぇ、誰にも言わないでね」
陽菜は少しオーバーに驚いた。
「へぇ〜いいじゃん」
「さっきも透くんのこと考えてたんだ〜」
「なんか私以外に透くん好きって言ってる子いた?」
「いや…別にいないかな」
「ならチャンスだね覚悟決めるよ」
と言った。
その時休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴ったので、陽菜は自分の席に戻って行った。
透くんは同じクラスの私と一緒でそんなに目立ったグループにはいない男の子だ。
私もあまりクラスでは目立たないタイプだ。
だからそんな私とずっと仲良くしてくれる陽菜は大切だった。
他の女子が好きな人なんて一軍の運動部のイケメンだろう。
でも、透くんはそんな人たちのせいで目立ってはいないが、かなり顔も整っていて、背も高い、そして聞いた話性格も優しい人らしい。
そのクラスの窓際で外を見ている、透き通る様な雰囲気を見るのが私は好きだった。
彼のその姿をずっと見ている。でも、どうせ私なんかわかられていないだろう。
彼は他の人達との関わりを見ていてもマイペースな人だと分かる。
外を見ていたと思ったら急にペンを走らせノートを取ったりかと思えば、うとうとして寝てしまったりしている。
私は彼のそういうところも可愛くて好きだ。
そんななのにしっかりテストは赤点なんて取ったこともないという。
私は逆に勉強はあまり得意じゃなくて、赤点で補講ばかりだ。
ずっと彼と深く関われるそんな奇跡を待っている。
来週からまたテストだから、彼を見ないでしっかりノートを書いて勉強しようと思ってるだけど、ふとした時に彼を見て落ち着いている。なにか透くんには妙なオーラーがある。
そこが私の惚れた部分なのだろう。
そんなことを思っていたら、授業は終わりのチャイムが鳴った。
これは6時間授業でこれで家に帰れる。
私は美術部だったので、終礼が終わると美術室へ向かった。
美術室は自分達のクラスとは違う校舎にある。
校舎を繋げている渡り廊下を歩いていると陽菜に喋りかけられた。
「ねぇねぇ私も今から部活なんだけどさ〜先終わったら校門の前で待ってってくれない?」
一緒に帰ろってことか。
「おっけ〜」
私は笑いながら応えた。
「ありがとう」
と言い陽菜はグラウンドの方へ向かった。
陽菜はバレー部のマネージャーをしている。
私は運動なんてそんなにできないので、唯一人よりはできると思える美術部に入っている。
でも、特に大きな賞を取った訳ではない。
クラスの中なら上手い方かなってぐらいだ。
そう思い歩いていると、美術室の前に着いた。
扉を開けて中に入った。
中には先輩が2人、そして後輩が1人いた。
部員は10人と少ない、だが先輩たちの作品は色々なところで評価されており、廃部などにはならい。
今日もその先輩たちは出席していた。
特に絶対出席というわけでもないので全員が揃うことなんて滅多にない。
大体この私も入れて4人の時が多いような気がする、他はたまにフラット来るってぐらいだ。
後輩の女の子は毎日来ているが、なんというのかわからない不思議な不気味な絵を書いている。
私は自分の席に座り書いている絵を自分の元へ持ってきて、
絵の具を準備して、描き始めた。
この時間も至福だ。自分のリズムで筆を動かし、自分の世界を描いていく。
それが認められる認められないなんて、どうでもいいこの時間が楽しかったらいい。
美術の宿題は縛りがあるが、こういう絵には縛りがなく自分のありのままを解き放てる、普段周りのことを考えて生活していると、こう解き放たれた時に快楽を感じる。
でも、いつも絵で私の心のパレットはぐちゃぐちゃだったのが洗われているが少し汚れが残ってしまう。
これは好きと伝えてられないことだろう。
その汚れが取れればきっと心は綺麗になるのだろう。
でも、私なんかって思ってしまうし、もし無理だった時この上なく落ち込んでパレットが破壊されるそんな気がする。
そう思いながら、作りたい色を作るため二色の絵の具を混ぜた。
昨日はうまくいったが、今日はなぜか思っている色がすぐに出なかった。
何回かやり直して、少し水の量を調整したり、して混ぜていくそして自分の思う色になったらそれを自分の世界に色づけていく。
真剣に絵と向き合っているとすぐに時間になり、気づかない間に秋田先輩と自分だけになっていた。
絵を乾かすために位置を変え、絵の具を片付けた。
そして、秋田先輩に挨拶をして、帰ろうとした。
でも、ふと足が止まってしまった。
それは良い秋田先輩の絵を見てだ。
「すごい」
ボソリと言った。
「おおありがとう」
秋田先輩は進めながら、言った。
「この絵さ、別に早く終わろうと思えば早く終われるんだよね、でもなんかこの絵をもっと良くしたいっていう気持ちが俺の中であるんだよね」
「本当にすごいですよね」
「俺この絵が好きなんだよなぁ。きもいだろうけど」
と少し笑いながら言った。
「いや、全然気持ち悪くないですよ、じゃあさよなら」
と言い部室を出た。
本当にすごかった。
秋田先輩の空の絵
と、ぼーっと考えていたが、陽菜に一緒に帰ろうと言われていたのを思い出した。
急いで階段を降りて陽菜が待っている場所に向かった。
陽菜が先に着いていた。
「お待たせ、ごめん遅くなった」
「全然待ってないよ、よし帰ろ〜」
と言い歩き出した。
そっからは、たわいもない話をして、歩いたり、電車に乗ったりして、家に帰った。
陽菜は特別家が近いってわけでもないが方向が同じだ。
私の方が先に電車を降りるので、今日も最寄りに着き、手を振り別れた。
ふと携帯で時間を見ると塾の時間までもう少しだった。
遅れないよう、走って塾へ向かった。
そして、塾で2時間ほど勉強して家に帰った。
「疲れた〜」
ただいま、帰ったよ、とかそんな言葉より心から出た言葉だった。
「おつかれ」
と言い2階からちょうど姉が降りてきた。
「大変だよね〜でも、浪人の方が大変だから今頑張って」
と言われた。
姉は去年大学受験で志望校に受からず、今は浪人している。
「今からご飯だから、荷物置いてきな」
と言われたので2階の自分の部屋に荷物を置きに行った。
部屋に荷物を置くと、階段を降りてリビングへ入った。
すると、いつも見かけない顔があった。
「陽菜久しぶり」
「お兄なんで帰ってるの?」
それは兄だった。
兄は大学3年で家を出ていたため、久しぶりに帰ってきていて驚いた。
「なんでいるの?」
「今日大学休みで大した用事もないから久々帰ろうかなと思ったんだよ」
「へぇ〜久しぶりだね」
と言い椅子に座った。
すると、姉が料理を出してきてくれた。
「母さんはそろそろ帰ってくる」
と姉は兄に言った。
私たちの家族は兄妹3人と母だ。
父は私が中学1年の時に他界した。
なので、母は毎日しっかり私たちのために働いている。
姉も今日は休みだが、大体バイトをして夜は家に私1人のことが多い。
姉も椅子に座ったので3人で食べはじめた。
姉の料理はとてもおいしい。
私が作る料理とは全然違うとてもおいしい。
「で、なんで急に帰ろうと思ったの?休みだからって帰るような人間じゃなくない?」
と姉は兄に聞いた。
「なんだよ、失礼だな
俺でもたまには寂しくなるんだよ」
「へぇ〜」
姉は少し嫌味っぽく言った。
「疑うなよ、それ以外の理由なんてないだろ」
と少し焦り言った。
「で、陽奈は学校どうなんだ?」
私に話を変えて、兄は私に聞いてきた。
「楽しいよ」
「まずそれは大事だが、彼氏は?」
私は口籠った。
「いないよ、そんなの」
「お前もだぞ唯」
と姉にも話をふりだした。
「いないよぉ〜ん」
となんとなく焦らすような言い方をした。
「おぉ?本当か」
兄は笑いながら言う。
「ええ、本当だよ」
急に我に返ったかのようにまじめに応えた。
「急すぎ」
姉も笑い堪えていたが、兄がそう言うと笑い出した。
「本当はどっちなんだよ?」
「えぇ、付き合ってはないけど気になってる人はいるよぉ〜」
と笑いながら言った。
なんでこんなに笑いながら言えるんだろ?私はそう思った。
「へぇ〜てっきりいるのかと思ったよ」
「そういうあんたは?」
すると兄は表情を変えた。
「おお、聞いて驚け出来たんだよ」
と偉くも自慢げに言ってきた。
「よかったじゃん」
私は思ったことをそのまま言った。
「おお、やっとだよ」
とまたも自慢げに言う。
「で、どんな人なの見せてよ」
姉は聞いた。
「ええ、嫉妬するなよ」
と言い兄はポケットからスマホを出して、二人でディズニーに行った時の写真を見せた。
「どうだ?」
「可愛いじゃん、まぁ私ほどではないかもね〜」
と姉は言った。
金髪ロングの少しギャルっぽい人だが、兄の大学はまぁまぁ賢いところだから、同じ学校なのかを疑った。
「同じ大学の人?」
「ちがう違う、バイト先一緒の子」
「へー年下?」
「よくわかったな、2歳下だから唯と同じなんだよ」
「普通に引くわ〜」
と少し笑いながら姉は言った。
「それは自由だろ」
と兄も笑いながら言った、そして私は少しこういうことに興味があったので長引かせようとまた兄に質問した。
「どっちから告白したの?」
「いや、告白されたんだよ〜人生で初めてでびっくりしたわ」
「で、OKは直ぐにしたの?」
「いや、少し考えはしたよ、元々可愛い子だなとは思ってたけどね」
と全部少し鼻高々に話す。
「可愛い子だなって思ってたのにお兄告白しなかったの?」
「いや、可愛いと思うのと、好きって思うのは違うだろ
なら、お前イケメンって思った人、全員好きになるのか?
ならねぇ〜だろ、そういうこと」
「たしかに、そうだね」
兄が急に真面目なことに少し驚きながら言った。
「だから、俺は少し仮期間みたいなのを自分の中で作って
俺が愛せるか、相手の愛はしっかりとした俺への愛なのかってのを調査って言い方は悪いけど、したぞ」
「ヘェ〜割とあんた大人なんだね」
姉が言った。
「当たり前だろ、両方が純愛じゃなきゃ長続きもしないし、
あんまりだし」
たしかに、その通りだと思った。
一方通行では恋愛は続かない、相思相愛じゃないといけない。
その後も色々たわいげのない話をして、兄は帰って行った。
「私も頑張らないとなぁ〜」
と姉は兄を玄関まで見送りに行き、兄が出て行った時に行った。
「何を?」
「色々」
とぼそっと姉は言った。
そうしてると母も帰ってきて、私は少し喋り、勉強して寝ると言い自分の部屋に戻った。
勉強をしようと机に向かったが、スケッチブックを開けていた。
そして、どんどん線を走らせその線と線は繋がっていき1つの物へとなっていく、これなんだ、これが好きなんだと思った。
できた
その絵は美しく、綺麗なものだった。
線がここまでのものを生み出すのかと毎回感心してしまう。
猫の絵ができた。
そして、ため息を吐き勉強を始めた。
気づいたら日にちが変わっており、布団に入ることにした。
また、目覚ましが鳴り憂鬱な1日が始まる合図が鳴った。
「おはよー」
私は階段を降り、母と姉に言った。
私は朝自分の分の弁当を作っている、そして今日もいつも通り作って、それをバックに入れて、制服に着替えて、少し急ぎめに学校に向かう。
今日もいつも通りギリギリに学校に着いた。
「大丈夫?」
教室に息切れしており、疲れ切っているところに声がした。
瑞樹はすぐに誰かわかった。
透くんだ。
「うん…
慌ててそれぐらいしか言えない。
急に話しかけられたからだ、これまで喋られたことすらなかった。
急にどうして?
瑞樹はわからなかった。
そんな事を考えていると透くんはどこかに行ってしまいそうになった。
瑞樹は急いで透くんの方を向いて
「ありがとう」
と言った。
笑おうとしたが、色々な事が頭を張り巡ってしまい上手く笑えているか分からなかった。
「ん、」
小さな声で返事して透くんは自分の席に戻って行った。
そこから授業が始まったが、そんなの手につかなかった。
まさか、相手から話してくれるとは思わなかった。
にしても、かっこよかった。
ドライな感じをして本当は優しい。
たぶん外から教室に入って来た時に、目についてたまたま喋りかけてくれたと思い気持ちを落ち着かせた。
そして,何も手つかずのまま午前中の授業が終わった。
もっと話を続けるようなことを言えば良かったなどの気持ち押し殺して、いつも通りクラスの仲のいいグループで集まり、べんとつを食べた。
「最近さ、彼氏出来たんだよね…
突如としてぼーっとしていた頭が晴らされた。
そして、その子は自分の恋バナを始めた。
聞くと、小学校からずっと学校が同じだった、幼馴染と実は両思いであり、付き合ったらしい。
そして、両方片思いとおもっていたから、それまではずっと友達のように遊んでいたりしたという。
そうゆうこともあるのだなと思った。
自分だけが好きと思っていても、実は相手も好きで…
ってことが、
だが、自分は違うと思ってしまった。
透くんは自分のことなんてどうも思っていないと、
そして、いつも長い学校が考えることも多く、いつもより早く終わった。
そして、今日の掃除になった瑞樹は終礼終わり、教室を掃除していた、同じ班の運動部の人はちょっとやって人任せにして帰ってしまった。
そんなこともあり、瑞樹は教室に1人になってしまった。
一人で掃除を終わらせて、今日はクラブもないので帰ろうと思ったら、後ろの扉が開いた音がした。
そちらを見ると透くんだった。
ここで話さなければと思った瑞樹は声を出した。
「どうしたの?」
と透くんに聞いてみた。
「忘れ物して、帰りの途中で思い出したから取りに来た」
と普通に返事してくれた。
「あっそうなんでね、最寄りどこなの?」
踏み込みすぎたか?っと思ったが、もしかしてを信じたかった。
「あぁたぶん同じ路線だよね」
と返ってきた。
瑞樹はびっくりした、同じ路線なのもそうだけど、自分が同じ路線に乗っていると知ってくれていたからだ。
「えっそうなの?、どこ駅?」
「…駅」
透くんの言った駅は瑞樹の最寄り駅の前の駅だった。
「私…駅なんだよ、めっちゃ近いね」
と喜びを隠しきれず、言ってしまった。
「そだな…
忘れ物を取り、透くんは帰ろうとし始めた。
「今から部活?」
と聞かれる。
「いや,今日はなくて、今から帰るところ」
と返事した。
「そなんだ、じゃあ」
と言って、透くんは帰ろうとした。
「一緒に帰ろう」
全ての勇気を振り絞って瑞樹は言った。
自分の恥ずかしいと言う心を殺して言った。
「うん、じゃあ帰ろう」
と透くんは返事してくれた。
信じられなかった、自分なんかと一緒に帰ってくれるのが、無理だと思い言ったから、びっくりしている。
「ありがとう」
そうして、2人は教室を出て、帰って行った。
「始めは誰と帰ってたの?」
と瑞樹は聞いた。
「1人」
と返ってきた。
「だから,人と帰るなんてほんとに久しぶりで」
瑞樹はらしいなと思った。
「そうだクラブ何入ってるんだっけ?」
「情け無いけど、帰宅部だよ」
そういえばそうだったと今思い出した。
触れてはいけないところだったかも知れないと思った。
「ごめん,変なこと聞いちゃって」
と謝った。
「いや、畠中さん《瑞樹》は悪くないよ」
と言ってくれた。
やはり、透くんは優しかった。
この優しさが好きになっていくものだと思った。
「畠中さんはたしか、美術部だよね?」
「うん」
透くんが自分を美術部だということを知ってくれていてかなり驚いた。
「なんで知ってるの?」
「いや,前文化祭の展示で見たような記憶があって」
「え、展示見てくれたんだ」
美術部の展示で自分の絵を見てくれてくれてるのが嬉しかった。
「うん、確か『樹』の絵だったよね?」
「そう、よく覚えてるね、あれあんまり自信なかったんだけど」
無意識的にも透くんからの評価を求めている自分がいた。
「あれ自信なかったの?」
全く嫌味などなく疑問に思ったように透くんは聞いてきた。
「俺は上手だなと思ったけどな」
と求めていた応えをくれた、とても、嬉しかった。
普段もたまには自分の絵を褒められることがある。
でも,その時の嬉しさとはまた違っていた。
それは、普段高評価をされたいなんて思わずに,書いていたりするからだろう。
自分の書きたい絵を描いて、その絵が展示されたり、コンクールに出てたりしてた。
そんなものだった。でも、ここでよく思われていることがとても嬉しかった。
「ありがとう、あんまり人に上手いなんて言われないから嬉しい」
と言った。
「そうなの?あの絵めちゃくちゃ凝ってるなって思ったし、綺麗だったよ」
どんどん褒めてくれる。
ただひたすらに幸せという気持ちの連続だった。
そんなこんなで駅まで歩き電車に乗り、たわいも無い話を繰り返し、透くんは最寄り駅に着いたので、私に軽く手を振り、降りていった。
そして、今日は家へと一目散に帰った。
家に帰り、用事を一通り終わらせたので、自室に行き、今日の幸せを噛み締めていた。
ずっと何か見えない壁のせいで、繋がらないんだと勝手に思っていた自分がいた。
でも、踏み出してみたら結果は違うかった。
少しあっても無いようなもんだった自信がついたような気がした。
そんな夜はすぐ明けて、また学校へ向かった。
そして、いつも通り学校に着いた。
透くんはいつも瑞樹が着く頃にはもう着いている。
いつも何時ごろの電車に乗っているのか少し気になっていた。
同じ電車にさへ乗れれば、会う機会を作れて、喋ることができるからだ。
ということで、次の日は朝少し早く家を出ることに決めた
その後、いつも通り授業を受けようとしたが、やはり距離が近づいたこともあり気になってしまった。
でも、みんながいる時に喋っていると、透くんにも悪いような気がした。
なので喋る気持ちを抑えて、また2人きりになれる時を待った。
すると、昼の休み時間にまさかの事が起きた。
透くんが喋りかけてきてくれたのだ、
「昨日言ってた、わからない数学の宿題できたの?」
と昨日帰路で話したことを覚えてくれていたようで、話しかけてくれた。
「いや、やっぱりわからなかった」
と応えた。
すると、透くんは自分の席に戻り、何かを持って、
またこちらに帰ってきた。
「これ、よかったら写して」
と言い、やり終わった後の宿題のプリントを出してくれた。
「ありがとう、ほんとにありがとう」
とても嬉しかった、透くんが私の為に色々してくれてるのが嬉しかった。
「別に、テストまでに出来ればいいからさ」
と言い立ち去って行った。
しっかり透くんのプリントを写して、数学の授業の前の休み時間に返しに行った。
「ありがとう、これでギリギリセーフだよ」
少し緊張もあるが、しっかり緩く言えた。
「また、わからなかったら言って、教えるの苦手だけど、教えたりするからさ」
と更にまさかの事を言ってくれた。
そして、これはチャンスだった。
また2人になれるチャンスである、なのでこの機会を逃す訳にはいかなかった。
「えっ!本当に、ならまた教えてよ」
と言った。
「わかりにくいと思うけど、いいならね」
と笑って応えてくれた。
「全然いいよ、本当に優しいだね」
「そうかな、また宿題とかも見せるから言ってね」
と言ってくれた、本当に優しいし、とても嬉しい、こんなに機会が来ることはなかなかないことだ。
私はこれまでずっと1人で、抱え込んでいる気持ちだったがそれは大きくなり、核心へと近づいていた。
そして、その後も何度か交流はあり、数学を教えてもらう日の予定が決まった。
放課後、駅の近くのカフェでやることになった。
とても楽しみだった。
あの日から透くんとは、ほぼ毎日喋るようになり、かなり色々な事を知れた。
少しは相手にも意識されるような人になれているようなそんな気がした。
だが、陽菜に透くんとやたら仲良くしている事を、少し話されたりしていたが別にそこまで気にしてなかった。
そして、早くもその日がやってきた、その日はテスト前だった為テスト勉強も含めてのこととしていた。
授業が全て終わり、終礼も終わり、透くんを誘って2人でカフェまで歩いて向かった。
ずっと「好きだ!」その気持ちを打ち明けるのは近づいてる気がした。
中編をお待ちください