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突然、締め付けるような痛みが胸を襲った。
意識を戻すと、真っ白な出口のない正方形の部屋に閉じ込められており、3つのぼろぼろな開いたままであるエレベーターと立て看板のみがあった。「左の昇降機にのれば、天国へ行くことができる。真ん中の昇降機に乗れば転生ができる。右の昇降機に乗れば、地獄へと行くことができる。自分が前世で良い行いをしたと思うのならば、左の昇降機に、悪い行いをしたと思うならば右の昇降機に、当てはまらぬものは、真ん中の昇降機に乗るが良い。」と立て看板には行書で書かれている。
何か思っていたのと違う。想像していた閻魔大王や天使ではなく、謎の昇降機というエレベーターであり、自己申告制だという。そうなると、地獄は想像通り下なのだろうか、いや、わからない。エレベーターに乗れば転生できるというのも理解できない。だが、地獄に行くことは無さそうなのでひとまず安心だ。天国もいいのだが、それよりも転生という言葉が魅力的である。大体、転生すれば、最強の武器やステータス、容姿、能力など、を生まれ持った状態で人生を謳歌することができるというのが鉄則だ。この3択なら間違いなく、転生だろ。
転生の昇降機とやらに入ると、見た目通りのオンボロで、下に少し沈んだ。ボタンを探したが、何も無く、ただゆっくりと扉が閉まっていく。振り返ると、さっきの立て看板に、「真ん中のエレベーターは故障中。」と丸文字で書かれていた。俺は焦って、扉をこじ開けようとしたが、敵いそうになく、このまま指ごと閉じられそうな予感がしたので、手を引いた。
体の感覚からして、ゆっくりと上に向かっているようだ。しかし、「ギュ、ギュ」という音がした瞬間、エレベーターが急降下した。
「あああああああああああああああああああ」
叫びながらどうしようかと頭をフル回転させる。思いついたのは、衝突の瞬間にジャンプすることであった。しかし、ジャンプをしようとするときには既に、地面に衝突していた。
目覚めると、母さんと父さんに似た顔があった。そして、俺の顔を覗き
「あーちゃん、パパでちゅよ」
と気持ち悪い口調で喋りかけてくるので、言い返そうとする
「あーーーぅ、あーーぁ」
という間抜けな声が出た。訳がわからないが、俺は転生というより、復生したようだ。