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君には才能しかなかった。  作者: でぃーえすちゃん
プロローグ 非実在性の実在
3/3

夏 その①

 夏。

 最近、夏というといつからいつまでを指すのか分からなくなってきた。5月を初夏と呼んで、6、7月が夏という人もいれば、夏休みの名の通り、7〜9月くらいが夏、という人もいる。僕は個人的に、夏といえば7、8月の二ヶ月くらいがピークで、5〜10月くらいまでは”なんか暑い”季節、11月が秋で他が冬、3、4月が春、みたいなイメージをぼんやり持っている。

 だから、この章題もざっくりとしたもので、具体的な時期はそんなに気にしないでほしい。

 それは、別に彼女とは全く関係のないことだから。


 ***


「先輩って、かっこいいですよね」

 雨の日だった。

 四宮は低気圧に弱い。天気が悪いと、すぐ机の上でうだうだしだすのだ。

 そして、急に適当なことを言い出す。軽い酔っぱらいみたいなものを想像してくれれば、それと大差ないと思う。こいつ、酒とか飲みだしたらどうなるんだろう。

「……そりゃどーも」

「あ、そうやって適当に流す……だからモテないんだー」

「モテてるかどうかなんて知らないだろ」

「彼女いる人は毎日部室でポチポチパソコンいじってないですよ」

「……」

 まあ。

 確かに。

「僕に彼女がいるいないは関係ないだろ」

「関係ありますよー……。私の収まるポストがなくなっちゃうじゃないですか」

「……なにそれ、告白?」

 危うく飲みかけのペットボトルを引っ掛けてこぼしそうになった。

 四宮ってそういうやつだったっけ。

「誰もいない部室で毎日男女が二人っきり、どう考えても最終的に付き合う流れじゃないですか」

「ああ、そう……びっくりした」

 ……そうだそうだ、こういうやつだった。

 理想の(シナリオ)があって、それを不意にこっちに突きつけてくる。

 春先の、彼女が曲を書いていると知った日から、だいたい2、3週間経って気づいた。彼女に対する接し方が曖昧になってしまっていた。普通の後輩から、なにか得体のしれない生き物に対峙しているような感覚に陥ってしまった。

 彼女の作っている曲は、聞いてみたい。でもなにか、嫌な予感がする。それに、「私に夢を見せてくれたら」という言い方。きっとかんたんには聞かせないつもりなんだろう。

「ね、先輩」

「……何?」

「先輩の作った曲、聞かせてください」

「……別にそんなあらたまって言わなくても、いつでも」

 と、言いかけて。

 嫌な妄想が頭をよぎった。


 ***


「うまいと思うけど……なんか、歌詞が中二病っぽくて嫌かも」

 

 ***


「……」

「? どうしたんですか?」

「……いや……うん、ネットに上げてるから、あとでLINEでリンク送るよ」


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