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⑥ インフレ防止のための預金封鎖3例

質問者:時代はかなり激動の世の中なのに過去の資産没収から学べることはあるのでしょうか……。



筆者:どのようモノがどのような条件で没収されたのかについて知っておくことによって対策は立てやすくなります。

 ただ、時代の変化に伴い政府としても没収する内容を変化させていく必要がありますので、応用させる必要はあると思いますね。


 それでは簡単にその当時の各国の状況を振り返りながら、どのようにして財産没収が行われたのかを見ていきます。



質問者:はい。お願いします。



筆者:まず見ていきたいのは1990年3月15日ブラジルに起きた預金封鎖と新紙幣の発行です。

 

 50,000 新クルゼイロ (現在は5,000 から 8,000レアル、日本円にして10万円弱) を超える預金を持っている人に対して全国において封鎖措置を実施しました。

これはコロールプランと言われています。


 このプランは前年度まで年間2000%(生活必需品、食料などは5000%)だったハイパーインフレーションを沈静させるための措置だったようですが、

 多数の企業倒産と失業者を生んでしまった上にまた、結果的にインフレの鎮静化にも失敗し、1994年のレアル導入までハイパーインフレは続くことになったというかなり悲惨なことが起きました。



質問者:インフレ対策だったのにそれに失敗してしまったのですね……。



筆者:ちなみに日本の1946年の預金封鎖もインフレ対策としては失敗だったようです。

 いわゆる「ドッジライン」と呼ばれる1949年の1ドル=360円(それまでは1ドル600円だった上に複数の相場制だった)の固定為替相場制に移行し、復興金融債券の日本銀行の引き受けの制限や市場メカニズムの改善を行ったことが功を奏したようです。


 逆に朝鮮戦争までかなりのデフレ経済になってしまったようですがね……。



質問者:ひえぇ、預金封鎖をして財産税まで取ったのにインフレが改善するとは限らないんですね……。



筆者:正直なところ、戦後日本は供給力問題や為替が大きく影響していたようですからね。

 根本問題が取り除かれたわけでは無いからです。



次に見ていきたいのは2001年12月1日 にアルゼンチンで起きた銀行業務の停止措置です。

 ブラジルがレアルを切り下げます。すると相対的にアルゼンチンペソは通貨高となり、輸出先の大半をブラジルに依存していた経済は輸出競争力を失い、外貨の返済が出来なくなるといった現象が起きました。

 小麦などは1ヶ月で60パーセント近くも値を上げるという暴騰となり人口流出も起きました。

 

アルゼンチン政府は国民が銀行から引き出せる額を週に上限250ドルとしました。また海外送金も制限され、結果的に国民のお金を強制徴収したようなものです。


 しかし外国系金融機関は大口取引が規制されていないため、12月から1月にかけて150億ドルもの資金をアルゼンチン市場から引き出していました。国民のお金より外国の投資家を守った政府には批判が集中し、経済の混乱に拍車をかけていました。


 変動相場制度にその後に移行し、通貨安による輸出競争力が強化され、アルゼンチン経済は復活。2006年にはIMFへの債務の返済も完了します。


 これもまた預金封鎖とは全く関係の無いところで債務の返済が完了したと言うことです。



筆者:次に最近の預金封鎖であるレバノンについて見ていこうと思います。

 日産の元会長であるゴーン氏が逃亡したことで有名になりましたね。


 レバノンの現在は深刻な貧困に陥っています。

77%の世帯が十分な食料や食料を買うためのお金を持っていません。シリア難民の家庭では、この数字は99%に達しています。


 そのために預金封鎖の前の2年間の間でレバノンは通貨の価値が1/10になったようで、2021年7月1日にはついに外貨不足のため銀行で預金者が外貨預金をUSD400以上引出不可になってしまったようです。


 レバノンは一部の人以外は悪夢のような生活を強いられているようです。


※ちなみにゴーン氏は“特権階級“のようでVIPクラブを運営しているらしく元気なようです。



質問者:ここまで見ていって思ったのですが、引き出せなくなるだけでは“財産没収”にはならないのではありませんか? ここまでは、財産税は加算されていない国ばかりだったような気がします。



筆者:パッと聞くとそう思われるかもしれないのですが、実を言うとそうでも無いのです。

 と言うのもとんでもない勢いでモノの値段が上昇していますから、預金を引き出せなくなるだけで財産が目減りしてしまいます。


 例えばこれまで100円で買えていたモノが1000円になったとします。

銀行口座に1万円貯金をしていた場合、それまでは100個買えていたのが、引き出さすことができない場合、値上がり後は10個しか買えなくなってしまうといった現象になるわけです。


 政府としては1万円で100個買われてしまうと、更にインフレが進行してしまうことが想定されますから預金封鎖をすることでインフレ対策になると思っているわけです。



質問者:なるほど……それで、預金封鎖をすると資産価値が物価高分それだけ減ってしまうということですか……。



筆者:それも贅沢品の価格が上がっているのではなく、食品や電力など生活必需品が何倍にもなっているわけですから尚更家計を直撃しているといえます。

 政府としては預金封鎖を行い、国民に自由に物資を買えなくしてしまう代わりに物資を配給制度にするといったことで生活を補うといった政策を行うことが考えられます。

 

※必ずしも預金封鎖をした国が配給制度が実現したとは限りません。



質問者:なるほど、一時的な管理社会にしてしまう訳なんですね。



筆者:ですから、極度なハイパーインフレが起きていることは予兆の一つとなるわけです。

 ただし、これまでの例を見てきたように更なるインフレを防ぐことには効果がありましたが、預金封鎖のみでは完全なるインフレを止めることは出来ませんでした。


 やはり、毎月価格が2倍になるような想像を絶するインフレを止めるためにはかなりの通貨安による貿易黒字を強大に出す他無いようですね。


 次の項目では、日本では少し起こりにくいパターンの預金封鎖について見ていこうと思います。

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