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④  国債暴落の要因②前半 格付け低下による“カントリーシーリング”の発生リスク

筆者;根本の問題として、日本政府が日本国債の信用性をアピールしておらず、

 そのために「日本財政破綻論者」が国内外に蔓延して主流派の思考となっているわけなんですね。


 詳しくは僕の過去のエッセイを見て欲しいのですが、日本が財政破綻するかどうかについては国債の総発行残高を見るのではなく、海外が日本国債を買っている割合を見るべきです。(ちなみに14%ほどです)


 本来であれば政府は日本銀行や民間銀行や保険会社が購入している分の国債に関しては、ゆくゆくは国民に還元されるので、何ら問題は無いということを宣伝していかなくてはならず、『政府は国民1人当たり1000万円の借金をしている』などというデマをいち早く打ち消すべきなのです。



質問者:しかし、どうしてそういうことをしないのでしょうか……以前のお話では財務省と財政法4条について問題だというお話がありましたが、どうもそれだけでは無さそうな気がするのですが……。



筆者:鋭いご質問ですね。財務省や政府が恐れているのは「世界標準」に基づいた「国際的な評価」です。

 


質問者:どういうことでしょうか?



筆者:実を言いますと世界の投資家たちが日本の国債を評価する「格付け」と言うものがあるのですが、これが先進国の中では一番低いランクなんですね。


 これまではその格付けが下がろうとも何の影響もなかったじゃないか! と言う反論もありそうなのですが、今は投資としての最低ランクであるところにあり、破産しないランクとしても最低ランクなんです。


 そこから下のランクは投資から投機にランクが下がり発展途上国や破綻経験のある国ばかりが並んでいますので、

 実を言うと「国際評価」として日本国債は「土俵際」に追い込まれている状態なのですね。



質問者:なるほどそういう評価がされているわけなのですか……。

 もしかするとこの評価を維持するために増税などを行っているのですか?



筆者:ズバリその通りです。


 参考程度ですがソブリン格付けを判断する要因として多くの他の格付け会社が挙げているのは(評価方法が一般公開されているわけでは無い)、


 一人あたりの国内総生産額(GDP)、財政収支、対外債務、実質経済成長率、過去の国債デフォルト、インフレーション率、経済発展段階などと言われています。


 そんな中で、一人当たりのGDPは韓国にも抜かれ、対外債務やインフレーション率ぐらいしか良いと評価されるところは無さそうです。



質問者:うーん、上の項目ですと確かにすぐに改善できそうな項目と言えば“財政収支”ぐらいしか無さそうなのですね。



筆者:やはり財務省幹部としては自分が在任している間に“格付けが下がる”という事態に陥って投機ランクになってしまうことは避けたいわけなんです。

 自分たちの出世や天下り先の確保をしていきたいわけですからね。

 財政法4条が悪条文と言う要素も多分にあると思いますが、格付け低下も避けたいわけなんです。



質問者:しかし国際的な格付けが下がってもデメリットが薄ければ別に何ともないのではありませんか?

 対海外債務は10%台ですし、これまでのことを考えれば仮にすべて売られたとしても日本銀行が買えばすべて解決しそうですが……。



筆者:確かにそういう見方もありますが、格付けが下がると他にもデメリットが存在します。

 今までは投資ランクの中でランクが下がっていただけなのですが、これからは特に日本国債が投機ランクに落ちてしまった場合は今までとは異なるリスクが生じると考えられています。


 まず大きなところとしてはカントリーシーリングと言った現象が起きると考えられます。



質問者:何ですかその聞き慣れない単語は……。



筆者:実を言うと僕も最近知りました(笑)。


 なるべくわかりやすく説明しますと、

 例えば日本法人A社がアメリカで事業を展開しているとします。

 そして日本が投機ランクに落ちた場合、A社がアメリカで借り入れをしようとした場合、

 借入が制限される可能性があります。

また、A社が日本に向けてドルを円に交換して送金することがアメリカ政府によって制限されてしまう可能性があるのです。


 本来は会社の実績によって借入れることのできる金額が決まるわけですが、これは会社の実績に関わらず会社が所属している国家によって影響を受けてしまうと言うことから、

“カントリーシーリング“と呼ばれているわけです。



質問者:え!? どうしてそんなことが起きてしまうのでしょうか……。



筆者:これは日本の国債の格付けが下がったことにより、日本の発行する通貨である円そのものの信用も下がってしまったことを意味するからです。


 信用が低下すると世界的な円安に今以上に進むことが予想されますので、安定した取引が見込めないと判断されてしまうのです。

 それを防ぐためには今以上に資金調達への利息を追加で支払ったりする必要が出てくるようです。


 三菱UFJリサーチ&コンサルティングが2016年6月に発表した『日本国債格下げが日本企業・金融機関に与える影響の考察』によりますと、


『BBB格レベルは、G7各国と比較した場合、欧州債務危機時に金融市場の混乱の影響を大きく受けたイタリアと現在は同格のレベルである。G7メンバーであるイタリアにおける欧州債務危機発生時を参考にすると、日本国債がBBB格レベルまで格下げされ、日本の危機的財政状況が顕在化した場合、「長期金利上昇幅3%、企業の資金調達コスト上昇幅 6%」がメルクマールになる。』


 とあります。6%も追加で借入れの際に必要ともなれば格付けが下がった以降では海外展開がやりにくくなるでしょうし、今進出している会社にも影響が出かねません。



質問者:な、なるほど……これはかなり問題かもしれません。



筆者:また日本の大手メガ銀行は日銀国債を担保に借り入れを行っているために、担保としての日本国債の価値が下がった場合に、新たな担保を追加請求されたり、日本国債を担保として受け入れてもらったりができなくなることが予想されます。


 信用が収縮することをクレジット・クランチと言ったりもします。

 この状況になるとたとえ日本銀行が政策金利は低金利にしても、

貸出金利は高金利になるという状況が起きたりもします。


 こうなると、企業等の資金繰りに深刻な支障が出るため、景気にも悪影響を与え、さらにリスク回避志向も高まり、金融機関や投資家は、よりリスクの低い国債等に資金を振り向け、質への逃避をもたらします。


 この様や状況になるともう負の連鎖になって日本の経済や信用はどんどん収縮していきます。

 そうなると、日本に本社を置いている会社はどんどん日本から出て行き雇用がままならなくなるといったことも考えられます。


 そうなるともう日本は大不況に陥ります。



質問者:し、しかしこうならない可能性もあるのですよね?



筆者:ポイントは利率上昇による国債価格の低下です。


 しかし、これ以上の格付けが下がった場合の利率上昇は中々避けられないという試算もあります。


 『日本銀行「金融システムレポート」2015』によりますと、

『今後さらなる格下げが相次いだ場合、海外において追加担保を請求されたり、担保としての受け入れを拒否されたりする事態が起きる可能性は否定できない。

金利上昇幅が 3%の場合、金融機関全体で 19.3 兆円保有円債の時価が下落するが、業態別にみると、大手行は 6.2 兆円の下落であるのに対し、地域銀行は 7.6 兆円下落と推定している。』


 とあります。


何故株価まで低下するのかと言いますと、国債というものは「その国の中で最も安全な債券」と想定されてるものですから、国内の不動産価格や株にも密接に関わっているんですよね。

 

 こうなってくると日本経済は崩壊し、「財産没収ルート」にもしかすると入っていく可能性はあるのです。

 勿論これは最悪のシナリオですから、こうならない可能性もありますが、財務省や今の政権はこういったリスクも考えて増税させたがっているんですね。


 この項目の後半では信用の大切さについて見ていこうと思います。

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