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悪食

 ピカピカに磨かれた大理石の食卓。豪華な装飾が施されたシャンデリアの灯りが、薄暗い室内を怪しく照らし出す。


「噂には聞いているよ、君が魔王討伐の英雄が一人、”怪力の斧使い”その人だね」


 席に座り、そう言って上品に笑う男はこの屋敷の主人。ウェルター・ド・ラヴァル伯爵。


 向かい合うように座るマーヤは、露骨に嫌そうな顔をして返答した。


「”怪力の斧使い”とか、変な名前で呼ぶんじゃねえよ。アタシはマーヤだ」


「それは失礼。ではマーヤと呼ぼう。私の事は親しみを込めてウェルターと呼んでくれると嬉しい」


 よく知らない相手に親しみを込めて呼べと言われても困る。


 しかし、マーヤは考えるのが面倒になって、彼の事はウェルターと呼び捨てにすることとした。


「……ウェルター。何でアタシを呼び出した?アタシの記憶が確かなら、アンタと会うのは初めてどころか、この国にやってきたのも初めてなんだが……」


 マーヤの問いに、ウェルターは薄い唇で静かに笑う。


「確かに私たちは初対面だ……しかし、数時間後には魂の友となっているかもしれない」


「……何を言っているんだ?」


「混乱させてしまったかな?……ふふっ、無理もない。だが今日君を呼んだ理由はシンプルだ……ともに食事を取りたい。ただ、それだけさ」


「食事?」


 ますます意味がわからない。


 ウェルター・ド・ラヴァル伯爵。


 彼とは初対面だが、その噂くらいは聞いたことがある。


 モルター帝国の最終兵器。


 卓越した兵の指揮能力を持ち、本人の武力も群を抜いている生粋の武人でありながら、絵画、歌、政治とその才能は他の追随を許さない。


 噂によると、彼の指揮した戦争は負け知らずらしい……。


 そんな完璧超人が、たさ食事をともにしたいがためにマーヤを呼び出す? 魔王討伐の英雄とパイプを作っておきたいのだろうか?


 そんなマーヤの困惑を読み取ったのだろう。ウェルターはその意図を語り始める。


「下心などないさ。この食事を終えた時、我々は真にわかりあえる。なぜなら……」


 ウェルターはパンパンと手を鳴らして召使に合図をする。


 ドアの外で待機していたのだろうか?


 給仕係が入室してきて、食卓の上に料理を並べ始める。


 その皿に盛られた料理を見て、マーヤはすべてを悟った。


「私の二つ名は ”悪食” ……ただ美食を追い続けた私には不本意な事ではあるが……”骨喰い”の集落にまで美食を求めて旅をした君なら、私の事が理解できると思ってね」


 大皿に盛られた魚の目玉。


 薄切りにされた生の肉は薔薇の形に盛り付けられ、その隣には見たことのない野草が添えられている。


 スープに浮いているのは骨の塊だろうか……?


 通常の食卓ではありえないその風景を見て、マーヤは納得したように頷いた。


「なるほどな……確かに話が合いそうだ」




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