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取引

 硬質でざらざらとして聞き取りづらく……しかし、それは確かに大陸言語だった。


「おいおい、鬼種ってのは大陸言語で意思疎通できる程度に頭が良い種族なのか? アタシ初耳なんだけど……」


 マーヤの問いに、メンバーで唯一鬼種との接触経験があるカガリがブンブンと首を横に振る。


「いやいやいや!鬼種がしゃべる何て俺も初耳ですよ!」


 慌てた様子のカガリ。


「……なんにせよ、対話ができるのなら話が変わってくるな……」


 ジェイコブは小さくため息をつき、覚悟を決めたように顔を上げて緋色の死神に語りかける。


「私はギルド幹部のジェイコブ!あなたは緋色の死神で間違いないか?」


「問いに問いで返すのカ? まあ良い……。緋色の死神……確かにそう呼ばれていたこともあっタ」


「……先ほどの質問に答えよう緋色の死神。対話ができると知らずにいきなり襲い掛かってしまった事は謝ろう……しかし、我々人間種はあなたという存在を非常に危険視している。街の近くに ”緋色の死神”が存在しているという事実を容認するわけにはいかないのだ」


 しばし見つめあう二人。やがて、緋色の死神がため息をついた。


「人間らしい理由ダ。どうにもお前たちは力ある他種族の存在が許せないらしイ……魔王を排除したように、この私も追い続けるつもりカネ?」


 緋色の死神は、非常に理性的だった。


 出会った瞬間の、野性の獣のような荒々しさは一切感じられず、むしろ会話からは品性のようなものさえ感じられる。


 ジェイコブは迷っていた。


 彼らに命じられたのは、緋色の死神の排除……、しかし死神がここまでの知性を持っているなんて想定外なのだ。


 そこでジェイコブは提案する。その提案が問題を先送りにするだけと知りながら。


「緋色の死神……取引をしないか?」





 







 

 王都エラドラ。


 ギルド本部、ギルドマスターであるハザンの執務室。


 任務を終えたジェイコブは、ハザンに今回のイレギュラーについて報告をしていた。


「……なるほどな。だいだいは理解した」


 渋い顔をしているハザン。ジェイコブは深々と頭を下げる。


「私の勝手な判断で撤退したことを謝罪いたします。いかなる罰も受けるつもりです」


 命令に背いてしまったことに深く謝罪するジェイコブ。


 しかしハザンはひらひらと手をふってそれを否定した。


「いや、お前の判断は間違っていない。死神がしゃべった事といい、正体不明の黒剣といい、今回の件はイレギュラー要素が多すぎる。チーム全員が生きて帰還できただけラッキーだな……」


 大きなため息をつき、額に手を当てるハザン。


「……今回の件は他言無用だ。わかっていると思うが。他のメンバーにも伝えておけ」


「その件なのですが……実はマーヤがすでに王都から旅立ってしまいまして……」


「なんだと?」


「あなたに彼女から伝言があるのすが……聞きますか?」


「どうせろくでもない伝言だろ?」


「ええ、”次にこんな面倒な事に巻き込んだら殺す” だそうです」


 ハザンはその伝言を聞いて、ニヤリと口角を吊り上げた。


「どうせ頼んだらまた引き受けてくれるさ。あいつはどうあがいても”救国の英雄”だからな」







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