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ギルド 2

「ギルド幹部……ねえ」


 じろじろとジェイコブの顔を眺めるマーヤ。


 三日会わなければ忘れてしまいそうなほど平凡な顔つき。武装はしているが、皮鎧の軽装であり、エラそうな雰囲気も強そうなオーラもない。


 そんな視線に気まずさを感じたのか、ジェイコブは言い訳をするように少し早口でまくしたてた。


「この格好はわざとだぞ? 今回は普段の支部の様子を見るために極秘でスイの街にやってきたからな、わざと目立たない格好をしているんだ」


「ふぅん……まあ、それはいいけどよ」


 ちらりとジェイコブを囲んでいるギルド員たちを見る。


「そのお偉いギルド幹部さまが、ただの旅人に何のようだい? こんな仰々しくたくさんの部下をつれてよ」


「急にすまない。修道院で暴漢を捕まえただろう? 実はあの男はCランクの冒険者……まあ、つまりギルドに加入しているメンバーな訳でね」


 チラリとジェイコブは自分の背後に控えるギルド員に視線を送る。視線の先にいた、少し顔色の悪い中年男が一歩前に出てきた。


「……うちに登録している冒険者が大変な御迷惑をおかけいたしました……以後、こういった事がないよう、冒険者の管理を徹底いたします」


 深々と頭を下げる中年男。隣のジェイコブが説明する。


「この人はこの街のギルド支部長だ……先程君が捉えた男だけでない。この街を拠点としている冒険者の粗暴は悪く、ああいった行為は日常茶飯事だという通報が本部に上がっている。故にお忍びでこの街に来て支部の視察をしていたわけだが……」


 ギロリと鋭い視線で支部長を睨み付けるジェイコブ。


「少しお灸を据えておいた。今はコイツを連れて迷惑をかけた人たちに謝って回っているところなんだ」


「そうかい……まあ、アタシはこの街の住人じゃねえから何にも言えねえが……ギルドの幹部ってのも大変だな」


「魔王も滅びて平和な世になったんだ……ギルドの登録冒険者が平和を乱してちゃ世話が無いだろ?」


「ちがいねえ」


 そしてどこからともなく互いに笑い出す。


「じゃあ、俺たちはもう行くよ。時間をとらせてすまなかったなマーヤ」


「おう、謝るべきやつはアタシ以外にたくさんいるんだろ?」


 そしてギルド員たちはとぼとぼと宿を出て行く。


 そして最期に扉に手をかけたジェイコブは、思い出したとばかりに振り返り、ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべて捨て台詞をはいた。


「じゃあなマーヤ。魔王討伐の英雄と知り合えて光栄だ」


 そう言い残して笑いながら出て行くジェイコブ。


 マーヤはポリポリと頭を掻いた。


「なんだ、バレてたってか」






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