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行ってきます
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
夕暮れが深まり月が見える空の下、娘に見送られて出発するリンの父と母。
(なんかふしぎ……いつもは私が見送られる側なのに)
「私たちも行こう」
いつの間にか隣にいたポーリャがリンを車へと誘う。
「うん。行こっか。おじいさんよろしくお願いします。それとお久しぶりです」
「大きくなったね、リンちゃん。あとこんばんは」
「あそうだ!こんばんはだった。忘れてました。こんばんは」
顔をやや赤らめて恥ずかしそうにうつむくリン。
「言えたから大丈夫だよ。急にいろいろあったから忘れることもあるさ」
(前と一緒で優しい人だね、ポーちゃんのおじいさんって)
ポーリャの祖父は車の扉を開け、リンとポーリャが乗り込むのを待つ。
二人が乗ってから扉を閉め、自分も車に乗りシートベルトを締める。
「シートベルトはしているね。それじゃあ出発するよ」
ポーリャの祖父は優しく話しかけて確認すると、リンの家を出発した。




