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ポーリャの魔法
「だね」
ポーリャはリンの言葉に頷くと杖を出して魔法を唱える。
「クマよクマクマクマの神――」
唱え終えると、ポーリャは自分より高いところにある重そうな箱を目掛け跳ぶ。
ほんの少しのジャンプで箱を軽々と片手で持ち上げ、そのまま机の上に置く。
大きな音が鳴り響く。
「むう……力加減が難しい……」
あっけにとられていたリンは淡々とつぶやくポーリャの声に我に返る。
「すごいや!ポーちゃんはクマの魔法なんだね」
「そう。熊も自然の一部」
「だからあの時も簡単に運んだんだね」
机に乗った箱がギシギシと揺れる中ドアがノックあれる。
「失礼します。マジック研究会に入会を希望しているのですが」
どこかで聞いた声にリンは記憶をたどる。
そうだ、この声と口調は朝霧と、リンには思い当たった。




