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一歩目
暗闇に一人っきりで歩く。そんな錯覚にリンは陥る。
(やっぱり学校に戻って朝霧ちゃんの看病をしよう!)
自分が原因なのに自分だけ遊ぶのはどうか、という思いがリンの脳裏を駆け巡る。
楽しそうに歩くゆっきーとポーリャに言葉をかけようとリンは意を決した。
『朝霧さん、目を覚ましたそうよ』
話しかけようとする直前、リンの耳元に姫野先生の声が届く。
「姫野――」
『救急車の人は大丈夫だって。病院に確認のために行くそうよ』
「あ、ありがとうございます」
「だからリンちゃんは楽しんでおいで。それがリンちゃんのやるべきことよ」
小声で話すリンに姫野先生は優しく促す。
「……はい」
しばらく間をおいてから、リンは姫野先生に答えた。
姫野先生の言葉に後押しされ、前に進むためにリンは一歩目を踏み出した。




