36/313
約束ごと
「どうしたの。こんなところで杖を出して」
急に後ろから声を掛けられ、びくっと体を硬直させるリン。
ゆっくり振り向くとそこにはポーリャがいた。
「おはよう、リンちゃん」
「お、おはようポーちゃん。ちょっとマジックの練習をね」
「それなら部室でやろう。誰かに見られると大変」
ポーリャはそう言うと、リンに部室のカギを見せ歩き出す。
(そっか。ポーちゃんにもゆっきーにも魔法のことは内緒なんだ)
先を歩くポーリャの背を見て、リンの胸はチクリと痛む。
(姫野先生との約束だから……)
約束は守るもの、リンはそう心に決めている。
というのも、少し前に門限を破ったことが一度だけあり、母に理由を聞かれた。
「つい夢中になっちゃって」
「夢中になることはいいことだけど罰は罰よ。しばらくお小遣い抜きね」
それ以来、リンは約束したことは必ず守っている。




