町のどこかに魔女がいる
リンとポーリャを何度か見て朝霧は珍しくオロオロして、いつかを訪ねた。
「体育館の倉庫案内。誤解は解いておいた」
「ありがとうございます。そういえば清白さん、お菓子はどう渡されますか?」
ふいに聞かれた朝霧の質問にリンは実演を交え、片手で袋を渡す演技をした。
「ラッピングして両手で渡すと成功率が上がるとお聞きしましたわ」
「それプラス最初は後ろ手で持ってから渡すとさらに上がるんだって」
「ちょっと待ってね。朝霧ちゃんのところでマカロン作ってラッピングして」
朝霧の言葉にゆっきーが続き、チャイムが響く中リンは状況を整理していく。
「休み明けにそれを後ろ手で持って両手でトウ兄に渡せばいいのね?」
「うん。あと渡すときはちゃんと相手の目を見るとさらに良くなるよ」
魔女は時として言葉巧みな口達者、という言い伝えがリンの脳裏をかすめる。
「あそれとねリンちゃん。姫野先生からの伝言。魔女ひなになる試験はね――」
「『私たちを一人前の魔女たまにすること』だって」
「チア部、図書委員、社交ダンス。魔法を教えられるのは週一回でしょうか」
「そんなー!」
リンの心からの叫びは、部活終了のチャイムとともにむなしく消えていった。




