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Fantaisie Impromptu(幻想即興曲)
朝霧やポーリャが驚く中、リンは言葉を続ける。
「杖よきらきら輝いて!色彩豊かなきらめきと!思い描いた旋律で――」
対照的に姫野先生は嬉しそうに見守っていた。
「私の色に染め上げて!」
杖が白く輝きだすとリンはポーリャと朝霧に呼びかける。
「ポーちゃん!朝霧ちゃん!杖貸して!」
呼びかけに応じて、ポーリャはとりやすい高さと速度で杖を投げ渡す。
朝霧も心配げな表情で少し遅れてポーリャに倣い、杖を投げた。
(大丈夫。だってこれはマジックショー。手品の舞台だから!)
人を楽しませるにはまず自分が楽しむ。
車の中で姫野先生から教わったことをリンは思い出す。
手に持った杖を宙に投げたところで、音楽が流れ始める。
音楽のリズムに合わせ、舞う杖が即興曲を奏で出す。
杖を手放すタイミング、高さ速さが鳴る音と色を次々変えていく。




