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バルーンアートとマジックと
ポーリャは杖を持つ手でバルーンをつかみ、握り、ひねりだす。
それがクマをかたどると、机の上に置いて新たなバルーンを取り出した。
(あれ?今度は片手だけ?)
リンがそう思っているとポーリャは杖を腰に差し離れた場所で指を動かす。
すると先ほどと同じくバルーンがひねられ、イヌの形になる。
(いったいどうやって……ってあれは糸?)
ピアノ線だろうか、ポーリャの指先から細い糸が窓からの光できらめく。
その後もポーリャは糸を巧みに使いウサギやネズミ、キリンを作っていった。
(徹底的に練習したんだろうな。まるで魔法みたい――って魔法!)
自分の番が近づくリンの脳裏に閃光が走り、ある考えがひらめく。
「先生、曲変えてもいいですか?」
リンは小声で姫野先生に話しかけ、許可を得ると周囲を見渡し眼を閉じる。
(大丈夫。できる。私なら)
考えをまとめていると拍手が巻き起こり、ポーリャの声を聴きリンは瞳を開く。
そして部屋のカーテンを閉め、舞台に上がると杖をかざす。
「イッツ ア ショータイム! 音色よ音色音の色――」




