291/313
到着と準備
姫野先生の車の中でマジック実演時に流す音楽を聴き、選んでいく。
いくつかある曲からそれぞれが選び終えたころ、車は保育園に到着した。
「ではあえて確認しますね。今回のルールについて」
「保育園にいる園児たちが喜んでくれたらいいんですよね?」
「マジックで、を入れましょうか。園児たちがマジックで喜んでくれたら」
教頭先生の質問にリンが答え、校長先生が補足する。
その傍らで菫山はメモを取り、広報委員長はカメラを取り出す。
保育園から年配の方とエプロンをつけた人が姿を見せ、こちらにやってきた。
(園長先生と保育士さんかな?)
リンの想像通り相手は園長先生と保育士さんで、挨拶を交わし着替えに向かう。
人の文字を掌に書き、リンは何度も飲み込む。
「やることやったんですもの。あとは自分を信じましょう」
緊張に固まるリンをほぐそうとしているのか、朝霧は優しい言葉を投げかける。
「気軽に言ってくれちゃって……自分を信じるのって、難しいんだよ」




