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生返事
「……ちゃん、リンちゃん」
「え?あうん大丈夫」
意識が思考の沼に沈む中、自分の名を聴いたリンはその場の勢いで返事をする。
「よし、ならそれで行こっか」
何の話か左右を見て戸惑うリンを尻目にゆっきーと岩筒地は腰を上げた。
「足首の痛みを何とか出来たら部活に戻っていいんでしたよね、先輩」
「自分たちの力で、だからね。終わるまで見学して、終わったら保健室ね」
チア部の先輩と友人たちが先に部室の外に向かい歩いていく。
岩筒地がかすかに足をかばいながら歩いていることにリンは気づいた。
「ねえ。ポーちゃん」
「話の内容――」
「それは後。回復の魔法って使える?」
小声で話すリンにポーリャは少しだけ難しい顔をする。
「そっか――あ!朝霧ちゃん!ちょうどいいところに!」
リンは部室の窓の外に腕章をつけ制服姿で歩く朝霧を見つけ声をかけた。




