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話はちゃんと聞きましょう
「そう言えばさ……リンちゃんって一二三のことどう思っているの?」
手招きして話しかけるリンに岩筒地は問いかける。
「ふえ?菫山君のこと?友達だよ」
少しだけ重くなっていた周囲がリンの気の抜けた返事と素直な言葉に消える。
「なら大丈夫ね。よかった」
「え?何が?」
「リンちゃんは気になる男の子いるのかってこと」
岩筒地の質問の意図を考えているリンにゆっきーがやさしく話しかける。
「今はトウ兄かな――」
去年マジックの発表会で何をやったのか知りたいとリンは続けようとした。
「トウグウ王子ならおすすめよ。今フリーだし」
興味津々な顔でチア部の先輩が先んじて会話に入ってくる。
「この間見かけたときかっこよかったですよ?」
「去年いろいろやらかしたからねえ。そのおかげで自分磨きを始めて――」
(あ。やっぱりマジックでもやらかしたんだ)
やらかしたの言葉にリンの気持ちは沈みだし続く言葉も会話も耳を通り抜ける。




