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風向き
「朝霧ちゃん忙しそう……」
リンは朝霧が閉めた扉を見つめ、寂しそうにつぶやく。
「ああ見えて寂しがり屋。思い出を作るといえばきっと来る」
「うん。そうよね、魔法の優先順位が高いならきっと参加してくれるよね」
ポーリャがリンのつぶやきを拾うと、リンが返した言葉に目を丸くする。
「優先順位?」
「一度にできることは一つだけだから優先順位をつけろって、昨日トウ兄から」
「……トウ兄も成長した。おととしや去年と比べてずっと」
遠い目をしてリンの言葉にポーリャは答える。
「ポーちゃん、昔は昔、今は今よ。昔のままって思っていても結構変わるよね」
「ゆっくり変わる。少しずつ確かに」
「えー、変わるなら早く変わってほしいよ」
「季節も?」
春を遅らせた負い目からか、リンは視線をそらして窓を開ける。
「あ、姫野先生だ。先生来たら魔法の練習一緒に頑張ろうね」
窓から入ってきた心地の良い風を浴びて、リンはポーリャを誘う。




