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郷土愛
ゆっきーは少し言いよどんだ後、意を決したように話し始める。
「リンちゃん引っ越したよね。それで変わってたらどうしようかって」
「私は私だよ。ほとんど寝てたし」
「うん。それでもさ、別の場所にいたじゃん。この町以外の場所にさ」
言葉を選んでいるそぶりを見せつつゆっきーは話す。
「ひょっとしてうらやましいとか思ってたりした?」
「ちょっとだけね。外の世界ってどんなだろうって気になっちゃうし」
「私が前の学校で学んだのは苗字とさん付けで呼ぶことぐらいだよ」
「愛称で呼び合う私たちにはすごくびっくりしたんだよ」
「そりゃ私もこれ聞いた時は驚いたけどさ……」
要は外の世界、この町以外で学んだことがうらやましかったかな、とリンは感じた。
「ゆっきーはこの町の外に出たいの?」
「興味はあるよ。この町が好きだし、ずっとここで暮らしたいってのものもあるし」
「私も。帰ってこれてよかったって思うもん」
リンはゆっきーの言葉に同意し、見つめあっていると、岩筒地が口をはさむ。
「みんなもおんなじ気持ちでね。大人びた対応しちゃおうって内緒で決まったの」




