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帰郷
「ねえ、お父さんお母さん窓、開けて良い?久しぶりにここの空気吸ってみたい」
両親の許可を得て窓を開けると、懐かしい空気がリンの鼻をくすぐる。
「どうりっかさん。久しぶりに帰ってきたこの町の空気は」
「最高だよ……」
「どうしたんだい?さっきまで元気だったのに。車に酔った?」
「大丈夫だよ、お父さん。ねえお母さん、リンって呼んでよ」
「どうして?」
「ひらがなだと恥ずかしくってさ。六花とか立花がよかったなって」
「りっかもいい響きよ」
「友達もリンちゃんって呼んでくれたのに……お父さんは?」
「僕は合わせるよ。リンちゃんで良いかな」
車を運転している父がすんなりと受け入れ、母はジト目で父を見る。
「リンちゃんも難しい年ごろになってきたからね。できるかぎり叶えてやりたいさ」
母が何か言おうとしたら、先に父が声を出す。
「ほら見えてきたよ。リンちゃんが今日から通う学校」
父がさす指の先へ、瞳を輝かせてリンは見つめていた。




