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純粋さ
「一度にやれることはひとつだけだからね。一個ずつやってるだけだよ」
きょとんとしているリンに細花先輩は諭すように話し始めた。
「一個ずつ?」
「そう。順番、というか優先順位を決めてやってるんだ」
「なんでわかるの、トウ兄」
「前にちょっとやらかしたからね」
「やらかす?なにを?」
少し遠い目をして困りげな顔と寂しげな顔が混ざった表情で細花先輩は笑みを浮かべる。
「あ、トウ兄が今フリーってゆっきーが言ってたことと関係あるの?」
原因を探っていたリンはひらめいた言葉をそのまま告げる。
その言葉に胸をえぐられたのか、細花先輩はよろめく。
「そ、そうだね……王子として振舞おうとあれやこれややってたからね」
「フリーって確か自由なんだよね?なんか縛られてるみたいだよ?」
「重責でつぶれそうなんだよ、苦い記憶が蘇ったり古傷が痛んだり」
純粋さあふれるリンの言葉に胸を押さえながら細花先輩は答えた。
「つぶれるんなら私も手伝うよ。本みたいに運べばいいの?」




