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昔と今と
「みんな変わっちゃったよ。私だけが置いてけぼり」
「リンちゃん?どうしてそう思うんだい?」
「冷めてるもん。みんな。魔女だって探せばいると思うのに」
ぽつりぽつりと話すリンに細花先輩は優しく答える。
「そうだね。いると思うよ。いるからこそのうわさなんだろうし」
「だったらなんでそんなに落ち着いていられるの?」
胸の中にため込んでいたのか、リンの口から言葉があふれる。
「私は引っ越したけど、ずっと寝てたけど、心はずっとこの町にあったよ!」
細花先輩はリンと向き合い、言葉を抱きしめるように聞いていた。
「みんなと一緒に!あの頃のまま!どうしてみんな昔みたいに――」
コツンとリンの額に、本の表紙が当たる。
本の表紙が目の前にあったかと思うと、すぐに遠ざかっていく。
「リンちゃん」
次第に声が大きくなっていたリンとは対照的に、細花先輩は静かに口を開く。
「図書室では静かにね」
拍子抜けしたのか、リンが言葉を失っていると細花先輩は優しく微笑む。




