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準備作業
「準備室なら少しぐらいは会話しても大丈夫だから」
「かばんもここに置いても?」
「大丈夫だよ。ここでも作業はできるからね」
細花先輩は机の上に置いてある本を指さす。
「ここで返ってきた本を分けて戻すんですね」
「そう。大雑把でもわけてあるとだいぶ楽だから」
てきぱきと本を分けていく細花先輩を、リンは感嘆の目で見つめる。
「手伝いますね、私も」
準備室の窓を開け、リンは図書委員の仕事を手伝う。
「やっぱりトウ兄は先輩だけあってしっかりしてるなあ」
「どうしたのさ、急に」
「みんなもそう。帰ってきて思うもん。私だけが子どもだなって」
作業する手を止めて、細花先輩はリンを温かい目で見つめる。
「みんな昔と一緒だよ。変わったとしても少しさ」
「そうかな。みんなと一緒に魔女探ししてた頃が懐かしいもん」
「魔女探し、か。懐かしいね」
窓からは春の風がゆっくりと舞い込む。




