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まわる消しゴム
リンがポーリャの席に体を向けると、ポーリャの目が語っていた。
起きて、と。
髪を指先でくるくると回し、リンは後ろの子に消しゴムを渡す。
「ポーちゃんにお願い」
その言葉を皮切りに、消しゴムが人から人に移っていく。出発点に戻るため。
ぐるぐる。ぐるぐる。
円を描くかのごとく。
ぐるぐる。ぐるぐる。
ポーリャの手に消しゴムが渡ったところでチャイムが鳴り響く。
(あははは。チャイムが祝福してる。ゴールインってね)
リンは脳内に鐘のついた時計塔を思い浮かべる。
その下で行われる結婚式。
想像を広げていくリンの耳には、チャイムの終わりと扉が開く音が届いた。




