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日本語マジック
「とーぐーだとね、東宮になって王子様って意味になるんだ」
遠い目をしてリンに説明する細花先輩。
「日本語って魔法みたいだよね、プリンセス」
「私はお姫様ってがらじゃ――」
「うん知ってる。僕も王子様扱いはちょっとね」
そう言って細花先輩は朗らかに笑う。
(なんだ昔のまんまじゃん。変わったのは背と声だけか)
見た目が変わったことで中身も、と警戒したのか、リンは胸をなでおろす。
雰囲気は和やかなものになり、二人はそのまま職員室に到着する。
「姫野先生なら出ていますね。しばらくしたら戻ってくると思いますよ」
「そうですか……困ったな」
「応接室で待っていますか?お茶ぐらい出しますよ」
「教頭先生!それはちょっと……」
「生徒との交流も教師の務めですよ。どうなさいますか?」
扉の近くで細花先輩が声をかけた先生が教頭先生とわかり、リンは緊張する。




