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考えること
「答え教えてくれても……」
「私が教えちゃうとそれだけに縛られちゃうからね」
ちりん、と鈴の音が鳴る。
音源をたどってみたら、姫野先生のパートナーの猫がリンを見ている。
「大切なところを踏まえてさえいれば、どんな答えでも正解だから」
「大切なところかあ」
「教える部分は最小限にしてるから、どうしても知りたくなったら聞きに来てね」
姫野先生は微笑みながらリンに話しかける。
「今知りたいです」
「なにを知りたいの?どこまでできたの?どンな風にしていきたいの?」
「ふえ?えーっと……」
姫野先生の急な問いかけに目を白黒させるリン。
「考えることも大切だからね。ゆっくりで良いから一つひとつ考えていってね」
「はーい。なら最後に一つ質問。大人になるってどういうこと?」
「地面に咲いている草花が遠くに感じられることも一つの答えになるわ」
姫野先生が答えると、洗濯終了の音楽が流れた。




