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車は進む
「魔女ってやめれるんですか?」
「ええ。辞めるって決めて杖を返してそれで終わり。簡単でしょ」
「先生、先輩はまだ見習い」
「ああそうか。冬将軍さん的に言うと魔女ひなか」
「そう。私も魔女ひな」
冬将軍の言葉は使いやすいのか、定着しそうな勢いにリンは大きな溜息をつく。
「溜息すると幸せ逃げちゃうぞ」
「わかってますよ……というか病院の面会って私たちが行っても大丈夫です?」
「大丈夫よ。許可は得てるし別の場所で面会するから」
姫野先生はリンと会話しながら大通りを曲がる。
太陽の光を反射してきらめく川の橋を渡り、車は進む。
「別の場所?先輩さんは入院してるんですよね?動けるんです?」
「うーんそうねえ……リンちゃんはオンライン会議やオンライン面接って知ってる?」
少し考えてから姫野先生はリンちゃんに問いかける。
「はい。朝霧ちゃんも師匠さんと会うのに使ってるって言ってました」
「それの病院版。病室と別の部屋をオンライン回線でつないでお話しするの」




