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季節の谷
「そもそもここに何しに来たんじゃ娘っ子さんや」
「冬将軍さん、名前で呼んでよ!リンでも清白でもこの際りっかでも良いから!」
リンの言葉を軽く聞き流し、冬将軍は真面目な顔になる。
「魔法を覚えたての者がほいほい来て良い場所と思うておるのか?ここが」
「ここってどこなの?」
「季節の谷、じゃよ」
大きく息を吐いてから簡潔に説明する冬将軍。
「だったらなおさらよ!私はここにきてやることがあるの!」
「何をやるんじゃ。ここで」
「私が雪を降らせたから!だから今はまだ寒いの!もう四月なのに!」
あきれたように聞く冬将軍に切羽詰まった表情で答えるリン。
「なるほどの。終わりかけた冬が強くなったのはそのためか」
また冬将軍がパチンと指を鳴らすと、周囲が移る。
あたりはまだ冬模様。雪景色が空を、木々を、立っているところを包んでいた。
「自然の力は強大かつ偉大な力。下手に干渉するとこうなるんじゃ」




