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面影
高台の階段を下りていると、リンは見知った顔に出会う。
階下にある花壇を、ポーリャが見ていた。
「リンちゃん。散歩?」
「あ、うん。ポーちゃんも?」
「図書館の帰り。花を見に来た」
「ひょっとして民話読んできたの?」
「そう。スラブと日本のやつ」
「よかった。ポーちゃんは昔のままで」
淡々と話すポーリャは、リンの言葉に首をかしげる。
「町もみんなもいろいろ変わったよね。引っ越し前と今とでさ」
「前と一緒。町もみんなも」
「そうかな。みんな背が伸びて大人っぽいよ」
「いずれ伸びる。リンちゃんも」
ポーリャは淡々ながらもリンを励ますと、また花壇を見る。
リンの記憶そのままに、色とりどりのパンジーが咲き乱れていた。
その様子に安心したのか、リンは笑顔をポーリャに見せお礼を告げる。




