102/313
引っ越した先の思い出
ポーリャの言葉にリンは苦虫を噛み潰したような顔をする。
「露骨すぎ」
「だってさあ、引っ越した先の学校は規則規則規則ばっかだったもん」
リンは苦い経験を飲み込もうと一気にお茶を飲む。
飲み終えたコップに再度お茶を注ぐポーリャ。
湯気が少しだけゆらゆらと立ち込める中、リンは話を続ける。
「そりゃさ、規則が大切なのはわかってるつもり」
「どう大切?」
「規則は守ってる限り私を守ってくれるってお父さんとお母さんから教わったの」
そう話すリンの顔はしかめっ面になる。
「持っとこうなんて言うか自由であってもいいと思うの」
「自由?」
「こう翼をバサバサさせて飛んでる鳥とかさ。規則の中だけど外みたいな」
リンの言葉にポーリャは首をかしげる。
「なんていうかこう……規則の内側と外側ギリギリみたいな場所?」
クッションから立ち上がって廊下側に向かうリン。




