表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/23

2-4 探せ、探せ。

 

「あの兵士を死霊術で化け物にしたら戦力になるか?」


「無理。キャパとMPの問題で」


 一応戦力になり得るか、と思って聞いてみたが、それはきついらしい。

 俺は元の世界に戻るために、全員が生きている必要がある。だからこそ捨てる。この周回を最大限に生かす。有益な情報をもっともって、次回に引き継ぐ。

 最後がハッピーエンドなら、経過は問わない。


「ちなみに絶対無理だとは思うけど、これクラスメイト生きてるって言えるかな」


 これが生存判定になるなら......と淡い期待を抱いてみたが、やはり無理だった。


「死霊術だから、死んでないと対象に出来ない。もう死んだでいいと思う」


 やっぱりか。

 まぁ想定していたが。なんて言ってみるが、つまるところ何を知ればいいのかわからない、力がないのにただ元凶だけ飛んでこられても困る訳だ。手詰まりとはこういったことを指すのか、と嫌な時に体感させられる。


「でもどうして......」


 彼女は疑問をつぶやいた。


「何がだ?」


「私たちが召喚されてここまで非力だってわかってたなら、国は私たちを召喚したこと自体を隠すはず。なのに、どうしてここまでばれているのか、って」


「確かに......まさか」


 そう、異世界召喚の最初は大抵、戦いを知らない学生たちが、異世界に慣れるフェーズ。

 スキルがあったり、ステータスがあったり。そんなこっちでの当たり前に触れて、少しずつ非力な学生が力をつける。

 となれば、非力とわかっている国はとりあえず情報封鎖、そして魔王側にばれないように時間稼ぎをするはずだ。


 なら、どうして。どうして魔王軍幹部――――それも最強と名高い科学王まで出張ってくるほど、確証をもって攻めてきているのか。

 ありきたりに考えるなら召喚の予兆をつかまれた、とかだろう。けど、予兆をつかまれるならもっと防衛力を高める――――、俺たちが最初だった? いや、そんな偶然よりも考えられることが一つ――――


「スパイがいるな」


 それが、一番考えられる可能性だった。

 それなら、行動は決まった。


「悪いが、ここからは別行動。俺は王城内を探してみる」


「え、どうして、生存者なんて誰もいない」


 そう、それは見てわかる。上を見上げればほぼすべての窓ガラスが割れており、ところどころ石レンガが崩れている。

 外装がこうなっているのに、中ははい、綺麗でしたなんてそんな甘っちょろいことは起きないだろう。


「たぶんスパイなら、死体がないはず――――」


 献身的な人であれば、情報を伝えて死ぬだろう。が、この状況、助かる見込みどころかただの勝ち戦で、そこら辺の物陰に隠れるだけで生存できるだろう状況であえて死を選ぶことはない。

 ならば、死体が転がっていない人が、スパイだ。


「でも、スパイがわかっても、どうしようもない」


 そう、そう考えるはずだ。


「そう、だから俺だけ探しに行く。生きていたら、またいろいろ教えてくれ」


 俺は巻き戻せることを説明する時間も惜しい、とすぐさま捜索を開始する。

 正門側には翼が生えた魔物、裏庭にはクラスメイトのあらびきハンバーグ。

 となると侵入経路は――――


「ここだな」


 俺はすぐ横にある、おそらく魔物によって開けられた穴を通る。

 中に入ると、見慣れない赤黒い絨毯が部屋を彩っていた。


「う――――」


 そこにあったのは、血が抜けきって蒼白になったメイドを見た。

 抵抗の跡はなく、血がそこら中に散らばっている以外は何もおかしなところは見当たらなかった。


「それだけ、力が強い、ってことか......?」


 まぁでも、俺は死ぬことはない。死ぬことが出来ない。


 だからこそ、捨て身で内部を探す。





 メイドの部屋を出た後は、そこらじゅうを歩き回った。


 魔物の影はなく、捕食された跡すらない人間の死体があちこちに転がっているだけ。

 時折頭部がない死体があったが、その服装からどんな役職の人かを大体予想して、目星をつけようとした。


 召喚された部屋には死体ナシ。襲撃の理由はやはり召喚された勇者を成長する前に殺すことだったようだ。


 国王の部屋を覗き見る。が、もうすでに何もかもが終わっていた。

 醜い顔をした国王の死体が、一人で玉座に座らさせられていた。

 故意に詰め込んだんだろう、足がだらんと前に出ていた。


「つまりさっきまでと違って、知能がある――――」


 愉快犯か、それとも何か目的があってか。

 科学王がやったのか、それとも隣の女か、それともまた新たな脅威か。

 そう思ったところで、ふと、思い出した。そして、ある確信を抱いた。


 醜い顔をした国王の死体が、一人で玉座に座らさせられていた。そう、一人で。



 国王がいるというのに――――



 長身の男はどこに行った?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ