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2-3 死は唐突に、何の感情も抱かせず

 昼食を食べてからまた訓練。あの三人はこっちをめっちゃにらんできているが、折原さんがキッ、と効果音が付きそうなにらみをきかせると一瞬でよそを向いてしまった。

 流石。あのにらみを俺も習得したいけど......俺にはまだ早いかも。主に表情筋のせいで。

 そしてまぁ、何も干渉されることなく夕食へ。


「今日はどうでしたか」


 そう、長身の男から聞かれる。


「まぁ、慣れないことばかりですよ。それと、集団の代表としてあの顔の整った男を立てておいてください。勇者を持つ者がリーダーじゃないってのはあんまりよろしくないってものありますし、彼のリーダーシップを養う意味もありますし。そっちにも損はないでしょう?」


 有利な契約を簡単に結べるし。致命的な契約を結んでいたら最悪俺の時間操作で戻すし、勇者がリーダーしてくれる方が俺にとっても動きやすい。


「確かにそうですね。それでは今後、あの顔の整った方に話を持ち掛けましょう。あの方の名前は?」


「いや、知りませんよ、たかだかクラスメイト」


「そ、そうですか。分かりました。それではこれで......」


 夕食に小難しい話を兼ねるのはどこの世でも変わらないのか......



「俺がこのグループの代表ですか!」


 少しうれしそうな表情を浮かべた後に、小難しい表情を浮かべた。しかしそれも一瞬で元の表情に戻り、「職務を全うします」とだけ言って彼は行ってしまった。


「彼の名前は神海 悟 というそうです。覚えて損はないかと思いますよ」


 そう、長身の彼に言われた。彼の名前は......もう知ったところで、使うところはないだろうな。

 これからは、彼がリーダーシップを取って、この世界のために尽力してくれるだろうから。


「そうですか、ありがとうございます」


 男子委員長――――神海くん、頑張ってくれたまえ。俺たちが世界に帰るために。





 翌日。意外となれるのは早いもので、三日目の朝だというのに知らない天井だをもうしなくなっていた。着替えて朝食を食べると、すぐに講義が始まった。


「今日はスキルについて学びましょう。ステータスを表示し、それに触れてください。そのスキルでできることが見えているはずです」


 講義の女性が、大きく手を広げながら、神を讃えているかのような大げさな身振り手振りをしている。


「『ステータス』」




 十時 宗次 lv1 男


 職業:死神


 HP:100/100

 MP300/300


 Str:153

 Vit:55

 Dex:135

 Int:137

 Mnd:65

 Agi:155


 SP:0


 スキル

 大鎌術lv1


 固有スキル

 死神lv1



 ギフト

 時間操作lv1



 死神って、何なんだよ......

 そういえば、ギフトに意識を持って行かれたせいで死神とかいう物騒なものの詳細を見ていない。

 それなら、今表示するか。


 タッチをすると、そこには衝撃の文字が書かれていた。



 死神lv1


 このスキルを獲得してからlv×30日の間、死ぬことが出来ない。

 lv×30日後、スキル所有者は死ぬ。残り27日



「んな馬鹿な」


 俺はそのスキル内容に、頭のおかしさしか感じなかった。


「先生、今日は何日ですか」


 命がかかわっているため、周囲の目など気にせずに先生に問う。


「え、あ、今日は夏の神だから......あなたたちのほうだと、七月三日、って感じかしら?」


 先ほどまでの大げさな感じは消えうせ、年相応、と言っても年上だが、少し慌てながらも教えてくれた。


 それならあと二十七日で魔王討伐、もしくはこのスキルのlvを上げないと。

 って、このスキルが10になって、千日たったら、俺は死ぬのか?


「そ、そうだ」と言って目の前の講師はンッ! と咳ばらいをする。そして「皆様方! スキルはどうだったでしょうか!」とまた過剰なジェスチャーをしながらも話を始めた。もう今から始めても遅いだろうに。

 とは思ったが、周りを見てみると意外とみんなスキルに目が行っていて、今までのやり取りとかは聞こえていなさそうだ。


「そのスキルは生命線ですので、信頼できる人にしか教えないよう! 注意してください」


 念を押すようにしてその講師は言うと、「さて、スキルの練習をしましょうか」と、教室から外へと移動するよう促してくる。

 結局スキルを目の前で使うことになるんだったらそこまで変わらないだろうに......とか思っていたが、案外ほかのみんなはためらいなく、というより新しいゲームを買ってもらったかのようなテンションで外へと向かっていった。


「どうしたの、早くいこうよ!」


 折原さんが手を差し伸べてくる。とはいってもなぁ。


「あ、うん、いこっか」


 悪い言い方をすれば敵に手の内を晒すような行為だろうに。と、やはり国が裏切った光景を見ている俺としては思うのだが、契約した以上、下手に手出しはしてこないだろう、と脳内推察を締めくくると、俺は折原さんに引っ張られるようにして外まで移動した。


「とは言っても俺、スキルがパッシブみたいなんですけどね」


 ってか、このスキル、どうやってlv上げるんだよ、何回も使うって、俺が死なないってのを何度も発動しろとか、正気の沙汰じゃあない。


「さて、スキルを使ってみてください、勇者たちよ!」


 講師がそう言った瞬間に、あちこちから声が上がる。


 数秒後、目の前にあったのは大きなクレーターだった。


「いや、これならすぐに魔王倒しに行こうぜ」


「ダメです! この程度では四天王にすら負けてしまいます!」


 いやいや、これでダメだったら四天王どんだけ強いんだよ。俺なんて攻撃が一ミリたりともできてないってのに。


「ちなみに、四天王の情報とか、あったりします?」


「えぇ。力、魔法、群衆、あとは......いえ、それだけです」


 少しためらった後に、その言葉を紡いだ。

 力がない今、情報が命だというのに......国の制御下といえばその通りだけど。


「ちなみに力関係は弱い方から群衆、魔法、力......となっています。いまだと、群衆の王の軍隊を十分の一、削れるかどうかです」


 まるで見てきたかのような遠い目をした彼女は「まぁ、軍隊が全部そろったところなんて、見たことないんですけどね!」と言っていた。なんだよ、ビビらせやがって。


 しかし俺の思考回路とは反対方向に、彼らは少し緊迫した表情を浮かべていた。何、神海君につられてそうなってるのかな、まぁ神海君がこの様子なら仕方ないか。


 当の神海君はというと、どこからか持ちだした刃の付いた剣を見て、その反射した己の顔を見て、難しい顔をしていた。

 俺の顔、イケメンじゃね? ってか?

 ま、流石にそれは冗談。


 冗談を言った後に、現実へと戻ってきた。結局何も進んでいない。俺は魔法が使えないし、スキルもlvの上げ方がわからない。どうしようもないじゃないか。


「ちなみに、スキルのlvの上げ方は二種類あります。一つは手っ取り早く、SPを消費すること。もう一つは、根気強くスキルを使い続けること。私としては前者を圧倒的に進めますよ」


 やはりポイント制か熟練度制か、どちらかで上がるシステムのようだ。

 ま、唯一の希望が断たれた、ってことか!


「スキルも試し打ちできたでしょうから、これから......そうですね、スキルを使わない訓練をしてから、昼食、そしてスキルを使って戦闘をしてみましょう!」


 その一声を聞いて、前から歓声が上がった。いやいや、どんだけスキル使いたいんだよ。使えば強くなるって言われたらそりゃ使いたくなるけど、もっと警戒しながらだな......


「ほーら、何そんなに固くなっちゃってるの!」


 折原さんの声。いつもなら誤解される表現だ、とか考えていられたのだろうけど、今はそんなに楽観視してはいられない。


「あ、ごめんね。すぐに行くよ」

 いつもの作り笑い。「うん、分かった!」と言ってみんなのほうへと走っていった彼女を追いかけるようにして、俺は場所を移動した。


 移動した先で変わらず戦闘訓練。昨日と変わったのもスキルが使える程度だ。まぁ、それが結構な違いを生み出してはいるけれど。


 パッシブスキルしかない俺の死神さんは皆のような派手さはない。ただ、死なないというだけだから。しかもその代償が一定期間後に確定で死ぬという笑えないものだ。


「さて、最後はお前だ」


 後ろの方で隠れていたにも関わらず、すぐに見つけ出された。


 仕方がないので、剣を構える。


「先手は譲ってやる。いつでもこい」


 そう言われたので、俺は少し右に回り込むようにして駆ける。


「遅い!」


 ゴリラ教官が剣を振った。

 俺はなすすべなくその攻撃をもろに受け、その体を爆発四散させた。

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