第1章 第5部下
『さて、それじゃあこれからは君に探偵として協力してもらう事になるけれど、大丈夫かな?』
「嫌ですけど」
大丈夫かな? だなんて……大丈夫な訳がない。
なのに、つい突っ込んでしまった。彼女が醸し出している「反応するのが当然」というオーラに、完全に呑まれてしまっている。
こんなあり得ない状況なのに、僕はなんだか、この状況を楽しんでいるのかもしれない……
しかし、彼女には一度もあったことがないのだ。ここが異世界だとするなら、彼女が人間ではないという可能性すらある。人間ではない何かしらがタイピングしているというのも想像つかないのだが……
だが、僕はそんな得体のしれないものに自分の命運を握られているのだ……
『ただ、私達も無条件で君を信頼する、という訳には行かないんだよ……だから、ちょっと君の推理力を試すために、小さい事件の解決をお願いしたいんだけど……』
「嫌ですけど」
この人は本当に何が言いたいんだ。僕は嫌だと言っているのに、適性テストがあるというのか?
そのテストに落ちてしまったら、僕はどうなるんだ?
わからない。さっきまでは少し楽しみ始めていたこの非日常だったけれど、もはや全然楽しめない……疑問が次々に湧いてくる。
僕の人権はどこに行ってしまったのか……
しかし、僕の勇気を振り絞った悲痛な叫び(文字だけど)は、結論から言えば、無視された。まるで完膚なきまでに。
『君に解決してほしい事件というのは……まだ未解決の事件なのだけれど。』
『うん、ごくごく、些細な事件よ。』
情景描写が無い……どうしたものか