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第1章 第4部上

今日書き終わらなかったので、第4部下を明日以降に投稿します。

 いや……え?

 え?

 え?

 え?


 ……は?


 窓の外……。

 異世界? ちょっと待て、待て、待て……。

 意味が分からない。

 

 窓の外に広がっていたのはまるで中世の世界だった。

 煉瓦で積み上げられた家々が僕の元いた世界とは全く異なった街並みを作っているし、遠くにうっすらと大きな城のシルエットもあった。

 高い視点だから、その家々が遠くの方までずっと作り込まれているのが見えて、それはオモチャのようだった。

 本当にラノベの中に入ったかのような異世界の異世界っぷりだ。

 あれ、僕って本の中に入れるアイテムなんて持っていたっけか……?

 ……持っている訳がなかった。

 うん。現実逃避はやめよう。

 細かい点の真偽はさておき、僕がなんだか訳の分からない状況に置かれている事は事実なのだ、受け入れなければ進まない。


 街ではまるで当たり前のように人に似た人でないナニカが歩いていた。

 それらは緑色だったり、ピンク色だったりして、異世界の異世界らしさはより際立っていた。

 それらは、二足歩行で歩いている位だから知能もあるのだろうけれど、でも人とは何かが違っていたように思う。

 はっきり言って不気味だった。


 しかし、僕がこんなに冷静に現状を分析できたのは後のことで、すぐに理解できたのは「僕の部屋の外が意味が分からない状態だ」という事だけだった。


 本当なら、この後そのまま部屋のドアを蹴っ飛ばして外に出て、窓を挟まずに直接自分の目で見たいと思うべきはずなのだろう。でも、何故か今の僕は無駄に落ち着いてしまっていて、ドアを開ける手段が僕に一切無いことは確かめるまでもなく分かっていた。

 異世界のナニカによって僕は閉じ込られているんだ。僕の理解を超える何かが起こっているのだろうから、脱出なんてしたら僕の立場はきっとより危うくなるはず。そう考えて、僕は無気力に窓の外を眺めるばかりだった。


 しかし、その間にもスズメとかって奴は僕の今の状況を、親切に、丁寧に教えてくれていた。

 意外と面倒見が良いって事なのか?

 その具体的な文面は後にするとして、彼女の言葉は荒唐無稽な事ばかりで、信じ難かった。

 まあ、僕がこの世界でやっていくための情報源が今の所彼女だけしか居ないことを思えば、信じるしかないのだろう。

 信じたくなくても、信じるしかない。


 メディアリテラシーとか、学校で教えて貰っていた時代が懐かしい……。


 いや。或いは映画撮影であるとか、そういう何かしらによって街並みが急に変わってしまうというのは有り得ることなのだろうか?

 それに乗じてMacをハッキングして、イタズラでとか……

 いや、イタズラで遠隔ハッキングなんて高度な事しないか……

 さらに、数時間でこんなセットを作り上げられるわけが無い。

 さっき帰ってきた時にはこんな街並みじゃなかったんだから……なかったはず。

 ……。異世界に来てから、数時間で前の記憶がぼやけつつあるのだろうか?

 そうだとすれば、異世界に来て初めて鳥肌が立つほど恐ろしい事だ。


 そういえば、Macのハッキングってどうやるんだろう?

 Macはハッキングに備えて厳重に作られているはずだし、っていうかそもそも異世界なのにパソコンやパソコンのハッキング技術があっていいのか?

 しかし、異世界のモノ、とか、この世にないモノの仕業だと思えばそんな疑問もどうでもいい。

 常識は捨てるしか無さそうだ。


 さて。

 肝心の、スズメからのメッセージだ。

 僕が窓を無気力に眺めている間に、なんだかいっぱい来ていた。


『改めて。私はスズメ。』

『異世界研究会、という組織の代表を務めさせて貰っているわ。』

『異世界研究会というのは、名前の通り異世界を研究する会よ。細かいディテールとかは説明がめんどくさいから割愛するわね。』

『今の異世界研究会は割と大きな学生組織よ。総メンバー数60人くらいかしら?』

『しかも、その60人はそれぞれの特技を持っているわ。アマチュアであっても素晴らしい特技達を持ってるのよ。

 例えば君のMacのウイルスに堅牢に設定されているOSを完全にハッキングしたり。

 君の家の、君自身の部屋を、君に気付かれることなく閉じ込めたり、部屋ごと異世界へワープしたり。』


 そう例を出されると、60人という人数の多さにものすごい恐怖を感じる。そんなすごい人たちが60人もいるなんて……想像もつかない。

 それを束ねるのがスズメだとすると……あれ?

 スズメって、もしかしてすごい人だったりする?


『さて、それを聞いて君は私達が何故そんな事をしたのか聞きたくなるのだろうけれど、その前に、私たちの世界について話すわね。』

『私達の世界は、君の世界と殆ど変わらないわ。ちょっとした差異はあるけれど──でも、まるで2つの世界は瓜二つよ。』


 なんだか不気味な文章を書く人だな、と思った。

 だって、根拠が何もないのに、急に「瓜二つ」だなんて。

 僕の世界に来たことがある訳も無いはずなのに。

 ……大体、今までの所共通点なんて何も見つけられていない。パソコンは使えているけど、向こう側でもパソコンが使えているのかどうかはまだ分からないし。

 街並みだって……レンガ造りってなんだよ。

 さっきまでは普通の住宅街だったのに。


『街並みには、もしかしたら面食らったかもしれないわね。でも、ここの建築技法も君たちの世界と共通のレンガ造りの家よ。ヨーロッパの辺りによくあるんじゃない?』


 スズメは「ヨーロッパ」を知っているのか。

 この世界観は、どうなっているのだろう?


 基本的に、なんでもありという感じなのだろうか?

 ……そういえば、言語ってどうなっているんだろう? スズメがあまりにも当然かのように日本語を喋っている(文章だから、「書いている」か)から、当たり前に受け入れてしまっていた。

 でも、それぞれ文化があるはずなのだ、異世界人が日本語が使えるというのは考えてみればおかしい。

 そういう、ご都合主義的な世界観、という事なのだろうか?

 スズメという名前だって。疑問に感じる暇も無いくらい話がどんどん進んでしまったから聞きそびれたが、スズメってめっちゃ日本の名前じゃないか。

 どうなっているんだ?

 本当に、ここは異世界なのか、すら怪しくなってくる矛盾だった。

 まあ、もう既に僕はスズメを信じると決めたんだ。

 とりあえず彼女の言葉を最後まで読もう。


『色々と、疑問はあるでしょうけれど、無理に理解しようとしない方が良いわ。』

 ……勘がいいことで。

『君の部屋は木造建築の筈なのに、どうやってレンガ造りの街並みなのか、とかは気にしなくていいわ。どっちみち、君は外から自分の部屋を見ることはできないのだから。』

 何故だろう?

 窓から外が見えると言うことは外からも窓が見えそうなものだが……窓の中は見えない、という意味なのか?

 と、考えていると、恐ろしい事を思いついてしまった。

 もう、この話題は封印しよう。


『君の部屋はしっかりとマンションの一室の内側に固定できているわ。──そう、君がいるのはマンションなのよ。5階建ての5階、最上階。』

 同じことを2回言わなくても。


『いい部屋でしょう?』

『君の世界における君の家の君の部屋が元あった部分だって大丈夫よ、気にしなくていいわ。──まあ、君はもう二度と君の世界とは関われないのだから、あらゆる心配は無用なのだけれど。』


 ……。もう、何も考えないことにしよう。疲れた。

 全部、スズメに任せよう。


『この世界の説明をするんだったのに、話が逸れてしまったわね。』

『君の世界とこの世界は、殆ど全く変わらないわ。Bluetoothドングルも君の世界とこの世界、殆ど同じ形だったから、直ぐに君のパソコンもハッキングできたわけだし』

 「殆ど」を漢字で書くタイプの奴なんだな……あんまり好きなタイプでは無い。

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