第1章 第2部
僕のMacが、輝いている。
しかし、それは既に僕のMacでは無い別の何かになってしまっていた。
Windowsのようでも、マッキントッシュのようでもない人間が作ったように見えない、UI。
そこに一切の文字は排除され、記号と、絵と、写真とによってディスプレイは輝いていた。
本当にそれはまるで見たこともないような斬新なものだった。斬新というより、僕の世界観にはあるべきでないような。新しいというよりは、別の時間軸で作られたような──
僕はそれを呆けたように、あるいは本当に呆けてしまったのかもしれない──食い入るように、それをただ見つめるばかりだった。
──と、ディスプレイに動くものがあった。
どうやら何か着信らしきものがあったらしい。しばらくぼーっと眺めていたが、突然正気に返ってそれを確認する。
真ん中だけが日本語だった。
ディスプレイ上の、このウィンドウだけが。
一切の文字を排除したこのディスプレイ上で、そのウィンドウは違和感だった。
僕のよく見慣れた日本語なのに、──このMacに本来書いてあるべき日本語がただ書いてあるだけなのに、それはまるでそこにあるべきでは無い物のように、思えた。
ともかく、このまるで新しいナニカになってしまったこの「パソコン」が、そう変わってから初めて文字を表示していたのだった。
そのパソコンの表示には違和感を感じながらも、僕の常識が通用する日本語に安心していたのも事実だ。
こんな意味の分からない状況の中で、安心してしまえる自分にも呆れるけれど。
着信の内容はこうだった。
これが、僕のパソコン上の唯一無二の日本語なのだった──
『私の名前はスズメ。』
『君の名前は?』
誰だよ。