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第1章 第1部

 久々の投稿です。

 半月ぶりとかの投稿なのに、連載中の小説を完結させないまま新作を書いてしまうのは、僕の悪い癖ですね。


 これは、小説家になろうで第2章の前編まで公開していたテストバージョンの書き足し版です。

 だいぶ書き足しました!

 具体的には、7倍くらい。

 7倍の面白さに、なってるといいけどな……

 閉じ込められたようだった。

 ……は?

 嘘だろ?

 ここは、僕の家。僕の部屋の中だ。なのに、閉じ込められたのだ。



 僕は学校から帰ってきて、手を洗う。

 僕にはもちろん両親がいるし、それに妹も居るのだが、両親は共働きだし妹も塾なので、今この家にはいなかった。つまり、今この家には僕一人だけだ。

 いつも通り僕は自分の部屋に戻り、扉を閉めた。


 もしも扉を閉めなければ──

 違う未来が、とか、そういうのは考えても意味がないと分かっているから、考えない。

 扉を閉めるのは僕の日々のローテーションで、それを変えることはないだろうから。

 ──それから、そのローテーションに従って僕はスマホを取り出し、メールチェックをする。

 しかしスマホに来ていた通知はYouTubeからのものだけで、僕は少し哀しくなった。まあ、どうせこんなインキャの僕にメールをするような物好きなんて居ないさ……

 それから、僕はMacを立ち上げた。

 ──僕の部屋にはマックがある。マクドナルドじゃない。Macintoshの、Macだ。僕の数少ない自慢の一つ。自分の部屋にパソコンがあるというだけでも僕らの世代は嬉しくなってしまうものだけれど──でも、僕の部屋にあるのはパソコンじゃあない。「Mac」だ。MacBook。

 Macは素晴らしい。スマートかつクールかつキュートなフォルム。使いやすさを洗練しつつ、各Macに最適化されてパワフルになったUI。無料ながらプロ志向のソフトウェア。


 僕は一通りMacで遊び終わった後、まずはじめ「それ」に気付いた。

 僕は小腹がすいたので、おやつを食べに行こうと思ったのだ。

 それで扉のノブを掴んだのだが、動かなかった。

 ノブは回ることは回るのだが、引いても、押しても全く動かない。うんともすんとも言わないのだった。

 何かが引っかかっているのだろうか?

 しかし、ドアノブ式の扉が何かに引っかかるというのは……引き戸なら、レールから外れてしまうということもあるだろうが、この扉ではそんなこと、起こりようもないのに……

 ものは試しだ、と扉をガチャガチャやってみる──やってみようとする。

 しかし、扉はガチャガチャとすら言わなかった。それは──まるで、扉が外からずっと押されているみたいな。扉が動かないように、扉をずっと押しているような気がして。

 嫌な予感が心の中で膨らんでいく。

 とても、嫌な予感が。

「誰か居ないか?」

 と、言ってみる。

 もし戸が何かに押されているんだとしたら、それは僕の妹あたりの悪戯ということになるはずだ。僕の妹はそんな事しないはずだが──こんな、無言で戸を抑え続けるなんて悪戯、質が悪すぎる──しかし、常識的にはそうとしか考えられない。

「誰か、居ないか?」

 誰も応えてくれないことが不安で、もう一度繰り返す。

 しかし。

 この家に、誰も居る筈がないのだ。

 妹は遅くまで塾で、あと2,3時間は帰らないだろうし、両親の仕事はそれよりももっと遅い。この状況が、故意の、人為的なものであるというのはあり得ない。

 あり得ない筈だったのだ──

 と、そこで僕は気付いてしまった。

 僕のMacが。愛すべきMacBookが──黒くなっている。

 黒く、というのはディスプレイのことだ。

 あれ?

 本体はさっきまでとまるでそのままなのだが、ディスプレイは真っ黒。その色は、何故か僕の不吉な予感をさらに増大させていくようだった。

 ディスプレイをそのままにしても、スリープにはならずにスクリーンセーバーが表示されるはずなのに……スクリーンセーバーだって、一時間後に設定してあるはずなのに……電源ケーブルだって、ちゃんと刺さっているのに……

 なぜ、画面は真っ暗なんだ?

 マウスをクリックしても、再びさっきの画面──さっき使っていたのはSafariだった──は現れなかった。

 電源ボタンを10秒間押し続けても、あのスタイリッシュなりんごのマークは現れなかった。

 ドアが開かない。

 Macが動かない。

 2つの出来事は一見全く無関係なのだけれど、しかし無関係であるからこそ、僕にはそれがとても、とても不気味に感じられた。

 ──あえて言葉にするなら、それは……死の予感、のような。

 さすがにそれは大げさにしても、閉じ込められた部屋で真っ暗なディスプレイを見ていると、精神状態はまるでまともではいられなくなってくる。

 本当なら、これから窓を調べに行くべきなのだろうが、そのためには雨戸を開けなければならない。

 雨戸は重いから、後回しにすることにした。

 重いってだけで後回しにするなんて、はは、と僕は自分で自分にツッコミを入れてみる。

 ──あれ? 僕は、この状況で、なんでこんなに余裕ぶっていられるんだろう……。自分で自分にツッコミ? なんだそれ。もっとパニックになるべきなのに……。

 でも、僕はなぜかこの状況を楽しんでいるみたいだった。

 自分の部屋で閉じ込められ、自分のパソコンは原因不明のブラックアウト。

 そんな「非日常」を、僕は楽しんで、いるのだ。


 僕はなんだか自分から動く気がしなくなって、布団に──僕はベッドじゃなくて布団派なのだ──横たわる。

 それから、しばらく呆けたように天井を見ていた。

 状況を整理しなきゃ、と脳は回転しようとするが、でも途中で放棄する。

 何もやる気が起きなかった。

 何をしてもどうせ無駄だ、と、思っていた。僕の側からは、この状況はきっと打開できないから──僕はぼんやりすることしかできない。


 何も考えず、全く動かないまま、布団の上で僕は「それ」に気付いた。

 のろのろと、僕はそこに近づく。


 はじめ、僕はそれを幻覚なのではないか、と思った。だって、それはまるで人間が作ったもののようには思えなかったから。──まるで、この世界にあるべきでは無いもののようだったから。


 それは──とても。美しかった。


 僕のMacが、輝いている。

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