妹背エリのお話その1
妹背エリは生まれながらに不幸な少女であった。
ごく普通に恋に落ち、ごく普通に結婚し、愛を確かめ合い、その結果、妹背エリはこの世に生を受けた。
純日本人の父と母の元に銀髪碧眼の女の子が生まれたのだ。
最初は病気かも知れないと検査を行い、異常はなく。
隔世遺伝かも知れないと家系図を調べるが、どちらの家庭にも調べられる限りでは、外国人の血は混じってはいなかった。
二人は当然不思議に思ったが、初めての二人の愛娘に愛情を注ぎ育てた。
問題が発生しだしたのは初めての誕生日を迎えてから数か月経過したくらいからだ。
玩具がほしいと手を伸ばすとそれが手元に向かったり、飲み物を零してしまった時はその液体がひとりでに容器に戻ったり、およそ常識では考えられないような現象を多発させ始めたのだ。
この頃から両親はエリを不気味がり、遠ざけるようになった。
最終的には、訳アリの子供を預ける施設の前に少しのお金と「妹背エリ」と名前の分かる名札と共に捨ててしまったのだ。
唯一の幸運は、エリの不思議な力をお金に替えなかったことだけであろう。
施設に入れられてからは不思議なことにエリはその力を使うことはなかった。
捨てられた理由についても施職員はいつものことかと深くは考えなかった。
名前も偽名か本名か分からないがそのまま使うことにした。
捨てられてしまったとはいえ、両親からの贈り物には違いなかったからだ。
時はたちエリは小学校に通いだした。
施設内で賄えるので保育園や幼稚園は必要のなかった彼女にとって初めての学園生活だ。
施設に同い年のいない彼女は、持ち前の明るさで元気に入学式に参加しホームルームに参加し、施設に帰っていった。
彼女は浮かれるばっかりで周りの視線に気が付いていなかった。奇異の目で見られていたことを。
この年頃の子供体は思ったことを口に出す。
相手のことなど考えずに。
それが子供、無邪気な、故に悪意のない言葉を。
「ねぇなんであの子、髪の色がちがうの?」
「ねぇなんであの子、目の色がちがうの?」
「ねぇなんであの子、肌の色がちがうの?」
「パパとママはいないの?」
「ねえ、なんで?」
無邪気な騒音が耳につく。うるさいうるさいうるさいうるさい。
わたしだって知りたい。
「なんであの子は私たちと違うの?」
なんでわたしとみんなはちがうの?
みんなと違うといけないの?
ねぇ、教えてよ!
教えてよ!