第九回:双極性障害
お断りしておきますが、これはあくまでモリ個人のお話です。疑問や疑念、事実の詳細については必ず医師にご相談ください。自己判断で薬を止めるのもいけません。登場するお薬も、モリにはこう作用しましたが、精神科の薬というのは往々にして個人差がひどいものです。ご注意ください。
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モリには二つ持病があります。精神的なものと身体的なものです。関連性はありませんが、人生で外れくじを引きすぎている感はとてもあります。モリは双極性障害Ⅱ型です。隠し立てするようなことでもなければ、特に気にもしていません。十六歳のときからうつ病ということで治療を受けてきましたが、治療抵抗性うつ病だの難治性うつ病だのという診断を経て双極性障害Ⅱ型となりました。割と最近の話です。
双極性障害Ⅰ型はとても分かりやすいです。破滅的な行動が顕著で、それはしばしば人生に問題をもたらすからです。お金を使い過ぎてしまう、というのは良い例です。Ⅰ型の人は何十万、何百万という単位でお金を動かしてしまったり、ないお金を使ってしまったりするのですが、Ⅱ型であるとこれがとても微妙なラインになり、ちょっとお金を使い過ぎてしまう、くらいになります。このため双極性障害Ⅱ型は非常に診断が難しいとされています。たとえばモリは軽躁状態になるとおしゃべりになって新しい趣味を見つけて没頭しはじめます。これはただ単に『元気』なだけであると認識していたため、医者に報告したことがなく、それ故にずっとうつ病だと思われていたというのがあります。ただ、双極性障害の場合、抗うつ剤を飲むと悪化したりします。モリはこれでした。何をしてもうつエピソードが治らないので、SSRIから三環系、四環系抗うつ薬まで、すべて試しました。最近はイフェクサーという薬を飲んでいましたが、そのせいか軽躁エピソードが悪化してしまい、軽躁状態になると何を見聞きしても心の中で怒り散らすような人になってしまいました。そもそもあまり友達がおらず、外に出ることも少ないので他人を攻撃することはありませんが、それでも言動が攻撃的になります。また、『おしゃべり』が悪化するようにもなりました。ずっと喋っていないと気が済まないのです。そういうわけで、最近二ヶ月ほどかけて抗うつ剤を止めました。結果、驚くほどうつが良くなりました。ただ、軽躁は残っています。
双極性障害Ⅱ型の人を探すのはとても難しいことです。恐らくほとんどの人がうつ病と誤診されているのではないかと思います。それは医者のせいというわけではなく、本人が軽躁状態を認識できないことが大いに関わっていると思います。ただし、双極性障害Ⅱ型はうつ病と異なり慢性疾患です。つまり生きている間はずっと双極性障害です。寛解はしますが、完治はしません。なので薬をずっと服用することになります。となると、この障害と生きている人間はどういう風に生きているのだろう、と考えます。そういうわけで、いつかは双極性障害Ⅱ型としての生活を記述した記録を公開できれば良いなと思っています。前例がないわけではないですが(お二人ほど双極性障害Ⅱ型を公表してネットでご活動なさっている方を見つけました)、あまりにも少ないので、モリもこういった誰かの疑問の一端を解決できればと思いました。自身の病状が安定し次第そのようなプロジェクトを始めたいと思っています。ちなみにこれは軽躁のせいではありません。悪しからず。
本日は以上です。ご清聴ありがとうございました。