第十六回:エタる
エタる、という言葉を昨日初めて聞きました。次回作のシナリオの不安点について、モリ家の人とディスカッションをさせていただいていたときの話です。モリ家の人はよく『小説を読もう』で小説を読んでいます。なぜか『小説家になろう』の仕組みにも詳しかったりします。そこでモリが『イデアの肖像』を書き終わったことで有頂天になっていたら、『小説家になろう』では八割の小説が『エタる』のだと聞きました。そのエンドレスエイトみたいな単語はなんですか、と聞いたところ、終わらない小説のことを言うそうですね。なるほど面白い言葉です。
『エタる』のには複数理由があると思います。第六回でも少々触れましたが、たとえば『書きながら考える』というスタイルの執筆方法は『エタる』可能性が高いと思います。モリは大体これでした。アイデアだけで書き始めてしまうパターンです。構想はあるのですが、起承転結がしっかり考えられていないので、途中でどう話を展開させていいのか分からなくなって詰みます。すると『エタる』確率が高くなります。世の中には書きながら考えて成功する方もいらっしゃるのかもしれませんが、モリには無理です。三十年近い人生の中でそれは学びました。この『エタり』を回避するには、シナリオボードを使うと良いです。とにかく全部、流れを書いてしまいます。最初から最後まで展開を決めてしまいます。それをメモって、その通りに書きます。すると話が決まっているので、書けば終わります。ただしこれは次の『エタる』可能性につながっていきます。
シナリオを決めても『エタる』可能性として、飽きる、というのがあります。これはモリが今回『イデアの肖像』で懸念していたことでした。飽きっぽいので、いくらシナリオが決まっていても毎日細々と書き続ける自信がなかったのです。最後まで書ききる前に飽きてしまっては仕方がありません。いくらシナリオを決めたときは面白い話だと思っても、書いているうちに自信を失うこともあります。これに関しては、モリは機械的になることで対処しました。面白い、面白くないはさておいて、とにかくシナリオ通りに三千字書きます。また、一日に一章以上は書かないようにします。たくさん書いてしまうと、盛り上がって翌日にバーンアウトするからです(これはモリが双極性障害であることにも由来するとは思いますが)。モリの話は一章が短いほうだと思います。短いほうが書きやすいです。さらに、あまり文章に凝らないようにもしています。表現が直接的であったり、ざっくりでも良いのです。しばらくは『エタる』ことを避けることを第一目標としております。これは『小説を読もう』で小説を読んでいらっしゃる読者層が、簡潔な文章を好むのであろうと思った故のことでもあります。
とはいえ、シナリオボードの段階で『エタる』可能性もあるので小説というのは難しいです。正直モリはシナリオボードに向かうのが苦手です。なので、この作業は土日に行っています。モリの家の人がしこたま難易度の高そうなゲームをしている横で黙々と書きます。モリはなぜか誰かと一緒にいるときが最も生産性を発揮するので、そういうことになっています。また、詰みそうになったらモリの家の人に助けを借ります。なので、小説を書いているとき、小説を書いていることを手助けしてくれる友人がいるのは素晴らしく有意であると思います。モリもそういう手助けをしてみたいものです。
ちなみに、今回の『イデアの肖像』が宗教戦争をベースとした重たい話になってしまったので、次回作は軽く漫画チックにしたい、と言いながらディスカッションをしたところ、移民問題と政治家の汚職をテーマにしたとんでもない話になりそうです。モリ家の人に助けを借りると大抵こうなります。頑張ります。
本日は以上になります。ご清聴ありがとうございました。