第十五回:イデアの裏話
連載中でありました小説『イデアの肖像(Nコード:N4404FS)』が完結致しましたので、本日の『十日論』はお祝いを兼ねまして『イデアの肖像』の裏話についてつらつらと語りたいと思います。
まず、感想でも頂いたところですが、イディとエフィは愛称です。それぞれアイドネウス、アフロディートという本名があります。もともと『イデアの肖像』の構想がもっとミリタリ要素を含んでいたため、アレスは戦乱の神アレスから、イディ(アイドネウス)はハデスの別名から取っています。エフィは『イデアの肖像』の現在のシナリオが固まった際に登場した人物なので、愛を司るアフロディーテの名前を冠しました。崩して愛称にしたのがイディとエフィということになります。
同様に、前回も活動報告で触れたことかと思いますが、街の名前は全てドイツ語を崩したものです。リューゲは『嘘(lüge)』、フィンスターは『暗いところ(finster)』、ヴァーズニッヒは『狂っている(wahnsinnig)』となります。登場人物の苗字も全てドイツの苗字で、名前があります。アレスは『裁く者(richter)』、イディは『苦味、酸味のあるもの(sauer)』、エフィは『農民(bauer)』などです。ユーピテルやヘレン、マリアにも意味があります。マリアなどは皮肉です。オットーは苗字に意味はありますが、唯一ファーストネームに意味がない人物です。こう書くとかなり可哀想です。ソフィアは『賢い人』という名前です。ファンタジーはどうしても人や街の名前をそれっぽくするのが大変です。ドイツ語を基準にしたのは単純にドイツ語に造詣があったからですが、響きもピリッとしているので好きです。
ちなみにこのお話は、モリがアイデアを出したものを『物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術(クリストファー・ボグラー他)』の展開に合わせてモリの家の人と大筋を打ち出し、『Charasuji』を使ってさらに深掘りしながらビートシートを作成したので、執筆開始には最後まで展開が決まっていました。以降モリはシナリオ通りに一日一章を目標に書いておりましたが、細かい齟齬などを直しているうちに本来より長くなってしまったり、一部設定が拾い切れなかったり、というのはあります。また、幕構成上は四幕になる予定でしたが、諸々の関係で三幕で終了致しました。
それにしても実は『イデアの肖像』はモリの処女作です。もちろん散文を書き散らかしていた時期もありますし、今もそうですが、ロングランで中編ほどの小説を書き終えたのは人生ではじめてです。こればっかりは自分を褒めてあげたい気持ちでいっぱいですし、この手順を踏めば内容はどうあれ小説を書き上げることが可能であるという確信も得ましたので、次回作も張り切って書いていこうと思っています。
物語が完結する感覚は初めて知りましたが、すべてのピースをはめ込み終わったパズルのようです。完結したことによってようやくアレスやイディ、エフィを含める登場人物たちが、縦横無尽に駆け回れる物語の中の世界を得られたのだろうと思います。アレスたちはモリの最初の大切な子供たちになりそうです。ちなみに一番好きなのはイディです。自分で書いていて彼は可愛いと思います。
本日は以上です。ご清聴ありがとうございました。