二人の姿
夢かもしれないと定番ではあるが頬をつねってはみたが指の冷たさと痛みが両方感じられた。
(幻覚でも夢でもない。…と言うことは、幽霊かよ。)
昔から霊感はなく見ることも感じることも一切なく過ごしてきた。
お化け屋敷や心霊番組は好きで幽霊を怖がったことは無いが、さすがに幽霊を目の前にすると鼓動が早まった。
(これって気が付いたって知られたらダメなのか?無視して良いんだろうか…え、本当にどうしたら良いんだ!)
初めてのことで対処の仕方が分からなかったが、とりあえず見なかったことにして横断歩道を渡った。
渡りきり振り返るがやはりそこには誰も居らず、私は自分に見間違いだと必死に言い聞かせ会社へ向かうことにした。
その後、無事私は会社に着き夜遅くまで働いた。
「お疲れ様です、先輩。もう帰ります?」
「あぁ。新宮も帰るのか?」
「帰りますよ、先輩終わってるなら一緒に帰ろうと思いましてね。」
「丁度今終わったとこ。準備するからちょっとだけ待ってて。」
「了解です。」
この新宮という男は一つ下の後輩である。住んでいるところが近いため、たまに一緒に帰ることもあり仲が良いと自分では思っている。
「準備出来たぞー。」
「はーい。」
二人で会社を出てゆっくり歩く。
二人で帰る時は上司の愚痴を言ったり、気になる女性社員の話をしたりと会話に困らない。
歩き始めて少し経った頃私は朝の出来事を思い出した。
(そういえば、今日忙しくて誰にも女の子の話してなかった。新宮知ってるかな?)
「お前さ、この先の一本道に横断歩道とカーブミラー有るの分かるよな?」
「有りますね。渡ったことないですけど、急にどうしたんすか?」
不思議そうに見つめる新宮に今朝体験した話を聞かせた。
それを聞いた新宮は少し驚いた顔をしたが、冗談だろうと真顔になった。
「俺そう言うの苦手なんですよ。眠たくて何か別のものを見間違えて女の子だと思ったんじゃないですか?」
「あれは見間違いじゃない!ちゃんと確認したんだから。お前も確認してくれよ。」
「ええぇぇぇ…。」
程なくして横断歩道が目の前に見え、私は嫌がる新宮を引っ張り横断歩道の前に立たせた。そして二人で恐る恐るカーブミラーを見た。
カーブミラーには私ともう一人、新宮が立っていた。
そこに女の子の姿は無かった。
「先輩と俺しか見えないですよ。やっぱり見間違いじゃ…。」
「いや、そんなはずはないと思うんだけど。もしかしたら、朝に見えるのかもしれない…明日の朝会社に行く時にお前も確認してくれよ!」
「えー、嫌っすよ。」
「頼むって、この間お前の企画手伝ってやったろ。」
「………、それ出すのはずるいですよ。仕方ないから明日朝確認しますよ。」
「ありがとうな!頼んだぞ。」
その後嫌々引き受けてくれた新宮と別れアパートに着いた。
恐怖心でストレスが溜まっていたのか、ご飯とお風呂を済ませた後すぐに眠気に襲われ私は眠りについた。




