レマーの春第3実働布教師団 その一
このものかだりはフィクションです。実在の人物、団体には、一切関係ありません。
東暦1915年
ローウェル帝国ー帝都ミザエラー
8:15AM
金髪を揺らし少年は歩く。165センチ前後で、野心に満ちた顔。彼の名前はニール=ハムキッシュ。駅員に切符を見せ、1番ホームへと降りて行く。砂埃で汚れた黒いブーツを、足でパタパタさせながら電車を待つ。細身のジーンズと白いワイシャツ。革のジャケットの上にグレーのロングコート。
腰に巻いたベルトの右には、拳銃をホルスターに入れられてぶら下がっている。これはニールの愛銃[ニールHB03]。トリガーを引くだけで発砲可能。しかしながら、弾丸は持っていない。
汽車の放つの轟音。1番ホームに着いた汽車から、大量の人が雪崩出てくる。人の嵐の過ぎたあと、ニールは汽車に乗った。全十車両のうち六号車の右側奥の座席。甲高い笛の音が鳴り、汽車はゆっくりと加速する。レール上に火花を散らし、汽車は遠く走って行った。
ニールは車内で木製の硬い座席に座りながら、窓の外を見ていた。いつのまにか海沿いの線路を走っていて、朝日に輝く青い海が、ニールには少しうざったかった。
「たく…キラキラとよぉ…下品なんだよな」
パァーン…。海に見とれる静かな車内に、銃声が染み渡る。一瞬の間を開け、車内はパニックになる。ニールはもう、「うんざりだ」と呟きそうなくらいのため息をついた。とりあえずは、大人しくしよう。
綺麗ななりの紳士淑女が、車両内を右往左往。しかし1人の少年は、水平線を眺めてうつらうつら。隣の車両で怒号と銃声、弾丸が肉にめり込み骨を砕く鈍い音。足音がして、六号車の扉が蹴破られる。
「全員伏せろ‼︎」
2メートルを超えそうな大男が怒鳴るが、人々はまだパニックを続ける。騒ぎ続ける乗客。
車窓に鋭い閃光が写り、肉片と血がビチビチと付着した。聞くだけで胸糞悪くなるこの音。ニールは溜息をついた。
「黙って、伏せてろ…」
大男の持つサブマシンガンは、口から煙を吐いていた。
「我々は愚かな国民に絶対神レマー・ラー様の教え救わんとする信徒である。この国は今、隣国と国境を巡り紛争を続けている。しかし!この大陸全てはレマー・ラー様の神土である。我々はこのレマー大陸全てを統一し、我らが絶対神に返上せしめんとする者なり‼︎しかし、愚かなる官僚及び軍上層部はその要求を呑まなかった。その為、貴様らを人質とし、再度要求することにした。これは聖戦である‼︎」
後続車両全てに2人ずつ、サブマシンガンを持った信徒を配置している。それを確認すると、ニールは立ち上がった。ブーツの踵がカツカツと音を立てる。
「おい‼︎そこの金髪、何を立っている?」
「あんた名前は?あんたら組織の名前も教えろ」
「我々はレマー教原理主義、『レマーの春』。俺はその第3実働布教師団団長、オルゴ=レマドゥーヒだ」
「了解、ありがとね」
ニールはポケットから一つ、バッジを取り出し襟につける。そのバッジには剣と[L]が、銀で彫刻されている。
「貴様‼︎」
LとはローウェルのLである。したがって国家公務員を表す。
「銀のLとその剣の紋…国家保安官か⁉︎」
「そゆこと…令状もあるけど、現行犯だよな?」