最南村~幻獣と黒の魔女~
祭壇洞窟の祭壇を出てなるべく早く洞窟から出るとキリアが左腕を高く上げていた。
手でも降ってくれるのかと思ってバルも片腕を上げ手を振った。
しかしキリアは振り返さず、そのだらりとした袖からちょっとだけ覗いた指にコウモリがとまる。
急いでキリアとヒロのもとへ駆け出す。
二百メートルほど走ってたどり着くと
なにやらキリアはアイネの花をしゃがんで観察している。
「少年。これからが本当の試練だ」
自分だって同じくらいの年齢の癖に少年呼ばわりかいなとバルは思ったが
「本当の試練って? 武器を女神様から受けとるのが試練なんじゃなかったっけ?」
「村長に何か言われてなかったか? 武器を賜ったら『何か』しろって」
「んー。あ、そういや武器の性能やらを確かめるために『蒼を抜け』って言われたっけ」
キリアの後ろの花は蒼色というより紫になってしまっている。
「一度僕たちがここに来たとき、すでに幻獣が現れてしまっていたため、倒してしまったがまた咲いた上に結構大きめに育っている。」
「幻獣?」
バルは聞きなれない言葉に少し戸惑った。
「魔獣の凄いやつ版ってとこかな」
さっきまで村の方角を見ていたヒロが喋りだす。
「そうなんだ。いい経験値になりそうだし戦えるなら戦いたいなー」
バルはそんなことを言いながらあることにいまさら気づく。
「そういえばなんで空が真っ暗なんだ? ま、まさか俺、洞窟で夜まで寝ちゃってた?!」
「寝てた? なにやってんだ少年。」
ヒロが呆れたポーズをとる。
「だって洞窟内にデッカイ蜘蛛がいて、子蜘蛛が邪魔して不覚にも噛まれてしまったんだ...」
「あぁ、さっきの溢れてきた虫か...」
キリアが嫌そうな顔をする。
「そういえば、噛まれたあと蜘蛛が凍って砕け散ってそのあと傷口から何かが毒を吸い出してくれたような...」
キリアはそう聞くとハッっとした顔をし肩に止まっているコウモリに目を向ける。
「まさかこいつの血、吸ってないよなぁ?」
「キ、キキキィ!」
「あ、多分そのコウモリは関係ないんじゃないかな、後ろから回された手は冷たかったけど人の手みたいだったし。」
「ヤ、ガ、ミ、?」
「キキィ...」
キリアに怖い顔されしょぼくれてるコウモリを置いといて、さっきの話を続ける。
「どうして空が闇に包まれているかは村へ戻ればすぐ分かるんだろう...しかし僕らが介入してしまってるうえに、試練を途中放棄したお前がこれからどうなっていくかは知らない。」
「村に何かが起こってるのか?! エッダや母さん、ドルヘズは?!早くいかなきゃ!」
「パニクるな少年。村はまだ時間はある。今の君の実力を知りたい。」
「時間があるってなんだよ! 間に合わ...」
「間に合わなければ『バル』お前のせい。間に合えば女神のお陰。」
たんたんとしかしわずかに力強くバルにキリアは言う。
「...っ...あーもう! 幻獣とやらをさっさと倒して村へ速攻行けばいんだろ?!」
「物わかりがよくてありがたい。」
またずっと村の方を見ていたヒロが口を開く。
「ちなみに俺の炎で強化されてわりと手強くなってるけど少年のためを思ってだから」
「なんでこんなときに余計なことを...!」
「まぁ、始まりの村だし強化したといっても弱い幻獣が現れるはず」
「ん?よくわかんないけど花をどうすりゃいんだ?」
「引っこ抜くんだ。ただし二度と同じ場所に咲かないように凍らせてから抜くんだ。...ヤガミ、お願い。」
ヤガミと呼ばれるコウモリが翼を広げると花が凍りついた。
「抜いていんだな?」
バルがキリアを見て聞くとうんとうなずいた。
凍りついた花を掴み一気に引っこ抜く。
すると空間の一部に光の穴が開き、幻獣が召還される。
そいつは猪とサイを混ぜたような姿で縦ニメートル、横一メートル半って辺りだった。
「周りに被害が出そうになったら僕らも攻撃する。それ以外は手を出さないつもりだから実力で倒しきれ。」
「わかった!」
しかしいきなりこんな、自分より大きいやつと戦うことになるとは...
いや、洞窟内にもいたなぁ
なんて考えつつ適当に突進してくる幻獣を何とかかわしつつ
それ似合わせて幻獣の横っ腹に切り込みを入れる
幻獣は痛さで咆哮し今度は早く強い突進をしてくる
バルがかわすと森の方へ突進。それをキリアが軽く蹴りでバルの方へ飛ばす
よくこんなの吹き飛ばせるな、とか思いつつ近くに吹き飛ばされた幻獣のさっき入れた切り込みに双剣で突き刺す。
幻獣はまた吠える。
剣を抜こうとするとミストが双剣からしゃべってくる。
「待って!まだ抜かないで!」
「え? ミスト? なんで?」
「私の力なら幻獣の動きを止められる!かもしれない...」
「かもって...」
と、いってる間に傷口からツタのようなものがブワッと現れ
幻獣を包み込んだ。
ミストの言った通り動きを封じ込めた。
「自然の聖霊の力を借りたの。今ならトドメをさせるわ!」
「了解! うおおおおおお!」
双剣を抜き、回転しながら軽く飛翔し脳天目掛けて振り下ろし切りを決める。
すると幻獣はツタと共に消滅し、小さなかけらを落としていった。
バルは双剣をしまい、そのかけらを拾う。
「おめでとう(だがしかし思ったより弱すぎたな...)。何か拾ったのか?」
と言いながらキリアが近づいてくる。
「なんか俺の持ってるエッダのお守りの結晶の、四分の一くらいの大きさだなぁ。色も同じみたいだし...」
「二個目の結晶の一部、だと...」
キリアはそう言って少し考えるようにだらりとしたパーカーの袖を口元に持ってくる。
「...それは僕らが探してるものの一部みたいだ」
「そうなんだ。じゃあキリアに渡すね」
あっさり渡したことに割りと結構ビックリしたキリア。
「ありがたい。」
そのかけらを手に握りしめキリアは目をつむった。
「まずいな...さっきまでは入り口で足止めしていたみたいだが、厄介なものが村の中に入り込んでしまっているみたいだ。」
「入り口って巫女の祭壇がある場所だ! エッダやみんなが心配だ!!」
そうバルは言って村に向かって走り出す。
「行くぞ木偶の坊!」
キリアはヒロに向かって声を張り上げた
そして二人も村に向かって走り出した。
バルは近道の獣道を、キリアは木をったって枝から枝へ飛ぶように走っている。
ヒロはバルを追いかけている。
村に近づけば近づくほど、バルの内側の何かがざわつき始める。
「母さん、ドルヘズ、そしてエッダ...みんな無事でいてくれ。」
一足早く森と林を抜けたキリアはそのまま立ち尽くしてしまった。
次に出てきたバルとヒロも同じく村の状況を見て立ち止まる。
外に出ている村人が全員空を見上げたまま固まっている。
空には黒いローブを着た魔女のようなものが浮かび上がっている。
そしてその魔女はまさに今村に最悪を起こそうと杖を村に向けたまま止まっていた。
「な、なんだよこれ!!」
いろんなものに影響受けてますね...
これから善き物語になっていたらいいなって思ってます。
この物語を作る前に思いついたものを走り書きしているのですが大雑把すぎるのと
唯一最初の流れから祭壇洞窟を抜けた後の話があったのですが、割りとそれてます...
本当は幻獣でも魔獣でもなくあるキャラと交戦するつもりでした。
まぁ、その先が考えられなかったので幻の魔獣と戦うことができてある意味よかったかな?
最後まで読んでいただきありがとうございます!