七月後半
もう……八月?(絶望)
『自己満足な偽善と我儘へ』
この世界にあるのは自己満足と偽善だけ
世界中から褒め称えられる偉業も
本人からすれば自己満足の副産物
他人の不調に気が付き、手を差し伸べる
それもしょせんぼろぼろの誰かを見たくないという我儘でしかない
でも、それでいい
自己満足で偽善の副産物でも、それに僕は救われたのだから
『尊敬の天才』
僕は天才などでは無い
何をやっても、何処へ行っても
僕の上を悠々と飛び越える人がいた
さらにその上に壁があって、天才がいる
天に届く様な天から与えられた才
そんな人々を見ながら、僕は彼らと同じ事を彼らより長い時間をかけ、彼らより出来の悪い物を晒す
その上で、彼らを尊敬する
『自己矛盾の訳』
僕らは自己矛盾しながら生きている
頑張らないように頑張っていたり
本音で語ろう!なんて嘘をついたり
自分の事を嫌って守ったりしている
こんなに矛盾するのはきっと
理想の自分と現実の自分のズレなのだろう
思った様にならなくて、今日も僕はまた自分の理想と矛盾してしまう
『ここにいます』
ここに僕は居る
誰かのため、何かのため、そんな理由は特に無いけど、ここに僕は居る
望む事も願う事も、特には無いけど
ただここに居る、それだけ
それだけだから、赦して
何もしないから、何もできないけど
ここに存在する事を、赦して
ここに居ます。今も、これからも
世界への存在申請
『僕では何もできない』
左腕を右手で体を抱きしめるように抑えてうつむいている少女がいた
僕は何も出来ずに去った
次の日も苦しげな顔で何かを守る様に小さくなっている少女がいた
僕は何もせずに去った
また次の日も居た
いい加減気付けよ
ここに居ても救われることは無い
声をかけると少女は始めて顔を上げた
『だって虫は苦手』
ひとりぼっちにも慣れてきた
そんな一人暮らしのある時に
部屋の隅に小さな蜘蛛が居て
その日は疲れてて追い出す気にもなれずに、放置した
翌朝、その蜘蛛は巣を作ってた
こいつもぼっち、なんとなくそう思った
蜘蛛はほかの虫を食べてくれるらしい
けど、殺虫剤を買いに行くことにした
『きっかけは俺だけど』
馬鹿みたいに暑い、俺はそう思う
目の前にはよく見知った男女が一組
「夏は嫌いかな……匂わない?」
「爽やかな香りならするけど?」
「何言ってんの……バカ」
「夏も好きだなぁ……君と付き合えた日が夏になる訳で」
「ほんとにもう……バカ」
なんて言って寄り添う二人
ああ、暑い
『見守る大人の思い』
君に弱い所を見せたくない
貴方にもっと頼って欲しい
そんな二人の身勝手な想いは大人になるたびに増えていって
これは二人には無かったもので
こんな思いになる理由も分からずに
喧嘩したりして
いつしか無邪気な貴方達も
その心を知る時が来るのだろうか
子供達の成長が嬉しくも寂しい
『英雄、ヒーロー病』
やり切った、出し切った
それは素晴らしいことなのかもしれない
だけど、その後が問題で
乗り越えた先には慈しむ平凡があって
その場に立役者がいないなんてさ
悲しいだろう
誰よりも心を枯らして
誰よりも苦しんで
誰よりも一生懸命だった
英雄は眠ったまま
『誇れる凡人』
君だって僕だって、才能なんか無いただの人だよ
雲の上を望んで壊れるより
自分の事を認めればいいじゃないか
人に自分を認めさせるのは難しいけど
自分が自分の無力を認めるのは易しい
だから僕は笑顔で言うよ
僕は才能なんか無い凡人だって
でも、今を楽しく生きているよって
『平凡な日に』
特に何もない日に少しだけゆっくり起きて
いつもより少しおしゃれをして街に出よう
雲一つないなんて言ったらウソになる
平凡な空をそっと眺めてくすりと笑って
少し贅沢なお肉を買って帰ろう
ちょっと豪華な晩御飯を作って
普段より少し夜更かしをして
そんな平凡な特別を愛しんでベッドに入る
『エンディングへ』
ハッピーエンドを迎えて、おめでとう、ありがとうと幸せに浸るのはいいが
そこで終わるわけではない
エンドと言いつつ人生はまだ続くものだ
だからこそハッピーエンドで終われない
ハッピーもバッドもノーマルもあるから
最期に迎えるデッドエンドが輝くのだ
だからまだ歩いていくよ
『届かない背中、誰もいない隣』
戦いの余波で吹き飛ばされる
そんな有象無象になりたくなくて必死に食らいついていた
両者の剣がぶつかり合い視界がきらめく
その光に負けない様に無駄と知りながら
僕だって剣を構える
もはや視界には二人の姿は見えない
だが二人のぶつかる力はそこにある
ならば、せめて一太刀だけでも